家の寿命が「たった30年」なのは先進国で日本だけ…「シロアリだらけの家」を住宅業界が放置する本当の理由

AI要約

日本の住宅は資産にならない現状について

住宅投資額と住宅資産額の乖離

日本の住宅寿命の短さと住宅政策の違い

■「持ち家vs.賃貸」論争の衝撃的な回答

 「持ち家か? 賃貸か?」

 ネット上ではしばしばこの論争が生まれます。ですが、その答えは永遠に決着がつくことはありません。

 持ち家派は「住宅は資産になるので賃貸より有利」、賃貸派は「家を持つと移動の自由が制限される、生活スタイルや家族構成の変化に対応できない」と主張します。

 つまり、持ち家派はその資産性に注目して家を持つことを推奨するようです。

 筆者は前職では、民間の指定確認検査機関の立場で、国土交通省が立ち上げたBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)や建築物省エネ法が新規制定された際に、民間の住宅性能に関する専門家として、国の委員会に入り、制度設計に携わりました。また現在は、高性能な住まいづくりをサポートする会社を経営しています。その専門家の立場から、この論争について衝撃的な回答をしたいと思います。

 結論は、「持ち家も、賃貸も資産にはならない」です。

■投資額はどんどん上がるのに、資産額はほぼ増えない

 ただし、この答えには条件があります。現状の「日本の」住宅は資産にならないというものです。

 日本だけが住宅が資産にならないと言われてもピンとこない方が多いかもしれません。しかし残念なことにそれは事実なのです。

 その理由を本稿では紹介します。

 図表1は、国土交通省のサイトに掲載されている資料です。

 このグラフが示すのは、日本の住宅(右側)は住宅に投資しているのに、住宅が資産にならないということです。

 赤い線グラフが住宅の投資額、青い棒グラフが住宅資産額です。どんどん乖離していることがおわかりいただけるかと思います。

■投資した額の半分以上が消えてしまっている

 一方、アメリカは住宅投資額がほぼそのまま資産として積み上がっています。これは欧州諸国も同様です。イギリス、フランス、ドイツも、おおむね住宅投資額に連動して、住宅資産額が積み上がっています。

 一方、日本の場合、住宅に投資したお金は資産にならずにどこかに消えてしまっており、その差額は約500兆円にも上っています。

 日本国民が住宅に投資した額の半分以上は資産として積み上がらずに、消えてしまっているのです。

 つまり、われわれ日本は欧米に比べて圧倒的に住宅が資産にならないのです。住宅ローンを一所懸命返済しても、肝心の住宅が資産にならないのですから、欧米に比べて、家計のバランスシートは健全になりにくいわけです。

■イギリスの141年に対し、日本の寿命はたった30年

 ではなぜ、日本だけが、住宅が資産にならないのでしょうか?

 理由はいくつかありますが、最大の理由のひとつに、日本の住宅が極端に短寿命であることが挙げられます。

 少し古い資料ですが、図表3のグラフを見ると一目瞭然です。欧米の住宅の平均寿命は、80~100年以上であるのに対して、日本は何と30年で寿命が尽きてしまいます。

 この違いは住宅政策の考え方によるものと言われています。

 欧米では長く大切に使っていくことを前提とした「ストック型」という考え方であるのに対して、日本では、戦後から高度経済成長期にかけて、「質」より「量」と割り切り、「スクラップアンドビルド」を前提とした「フロー型」の考え方で住宅政策がとられてきました。

 その後、「量」は充足したため、現在の日本の住宅政策は、「ストック型」に移行し、住宅の長寿命化を図ろうとしています。しかし、欧米に比べればまだまだと言わざるを得ません。