歴史的円安でも日銀7月の利上げは「ない」ワケ、方針転換への必須条件とは

AI要約

7月18日の円相場1ドル=155円台半ばとなり1カ月ぶりの円高・ドル安水準となったものの、7月の金融政策決定会合での利上げは、観測記事やリークが少ないことから日銀が前向きでない可能性がある。

日銀が利上げに動く材料としては、賃金上昇と物価上昇圧力が重要である。

賃金の伸びが日銀に利上げを促しており、物価上昇圧力も存在している。

歴史的円安でも日銀7月の利上げは「ない」ワケ、方針転換への必須条件とは

 7月18日の円相場1ドル=155円台半ばとなり1カ月ぶりの円高・ドル安水準となったものの、7月の金融政策決定会合での利上げは、観測記事やリークが少ないことから日銀が前向きでない可能性がある。では、どのような材料がそろえば日銀が利上げに動くのだろうか。2つの観点から利上げ時期を予想する。

 7月の金融政策決定会合を1週間前に控えた現時点において、利上げに関する観測記事やリーク報道はほとんど出ていない。植田総裁が就任して以降、日銀が「動く」際は、事前に観測報道が多く出回り、金融政策会合の当日までに政策変更が既成事実化している印象があるので、現時点でこれが出ていないことから判断すると、日銀は追加の利上げにそこまで前向きではないのかもしれない。

 日銀を揺さぶっていた円安が政府の為替介入によっていったんは抑制されていることが、日銀に時間的余裕を与えているのだろうか。

 7月会合で利上げを見送った場合、その後の数日で円安が急加速する可能性が否定できず、その場合、かえって日銀の政策的な自由度を低下させる事態になりかねない。そう考えると、やはり日銀が利上げを待つことのハードルは高いように思える。

 ちなみに、QUICK月次調査<債券>によると、市場関係者(有効回答数114)の予想は7月が26名、9月が29名、10月が49名、それ以降が10名と分散している。9月以降の利上げを予想する向きは、日銀が7月会合における同時決定(利上げと長国買入れ減額)を避けるとの視点がありそうだ。

 では、どのような材料がそろえば日銀が利上げに動くのだろうか。2つの点から考えてみたい。

 日銀を利上げに動かす材料としては、1つ目に賃金が重要だろう。5月毎月勤労統計(共通事業所ベース)によると、現金給与総額は前年比プラス2.3%であった。賃金の基調を読む上で重視すべき一般労働者(≒正社員)の所定内給与(≒基本給)は前年比プラス2.7%と飛躍的な伸びとなり、過去数年のトレンドを明確に上抜けた。その上、向こう数ヶ月にさらなる加速が見込まれる。

 というのも、5月の段階では改定後の賃金を支払っている企業は、およそ半数程度にすぎないためだ。6月以降に改定後の賃金が支給されると、所定内給与はさらなる加速を遂げる公算が大きく、最終的には春闘(ベア相当部分約プラス3.6%)の結果に近くなると想定される。

 こうした傾向はパートタイム労働者を含んだ系列で見ても、大きな変化はないだろう。賃金は物価上昇を加味した実質値で見れば依然としてマイナスであるが、名目賃金の伸びは疑いの余地なく日銀に利上げを促している。

 2つ目は、賃金上昇に由来する物価上昇圧力だ。