大手卸が自給率向上も視野に国産ブランド強化 全国販売網で地域メーカー・生産者を支援

AI要約

三菱食品は国産原料にこだわった自社ブランド「もっとNippon!」の展開を通じ、国内食品産業の活性化に取り組んでいる。

同社は地域メーカーとの商品開発を全国販売網で展開し、1次生産者の経営支援や伝統食品の継承を目指し、食料自給率の向上も目指す。

最新の取り組みとして、新たなベネフィット提供型商品や自社開発の電子レンジ調理対応の乾物キット商品「もっとNippon!レンジでぽん!」シリーズなどを展開している。

大手卸が自給率向上も視野に国産ブランド強化 全国販売網で地域メーカー・生産者を支援

 三菱食品は国産原料にこだわった自社ブランド「もっとNippon!」の展開を通じ、国内食品産業の活性化に努めている。地域メーカーとの開発商品を全国販売網で流通させ、1次生産者の経営支援や伝統食品の継承を図るとともに、ひいては食料自給率の向上も目指す取り組みだ。同社がサステナビリティ重点課題の一つに掲げる「地域創生」にも合致する。

 「もっとNippon!」は同社発足前の旧菱食時代に地産地消をテーマにした販促企画として展開していたが、2017年に同名でブランド化。「地方の元気は、日本の元気。」をコンセプトに地域の多様なメーカーと商品開発を進め、全国のSMやDgSへ販売している。同社・国内商品開発本部の岩波伽歩氏は「伝統食品や地域の良さを幅広く伝え、もっと日本を知ってもらうことを目指したブランド」と導入背景を語る。

 商品群は(1)純乾物(2)地域ブランドコラボ(3)新たなベネフィット提供型の3軸(全27品)で構成。主力の純乾物は三陸産カットワカメや九州産芽ヒジキ、沖縄県産加工黒糖といった農水産乾物を揃え、自社で開発機能を持たない中小SMのPB代替としてのニーズも高い。地域ブランドコラボは「十勝おはぎ」で有名なサザエ食品と連携したゆでアズキなどの商品を展開している。

 近年とりわけ注力しているのが、新たなベネフィット提供型商品。水戻しなど調理に手間のかかる乾物に時短・簡便、機能性などの付加価値を持たせ、若年層を中心とした新規ユーザーの購買意欲を喚起するのが狙いだ。

 それに向けた代表的商品が、電子レンジ調理対応の乾物キット商品「もっとNippon!レンジでぽん!」シリーズ。乾物と調味液をセットし、袋のまま電子レンジで2分加熱すれば調理が完結する。「茎わかめ煮」「ひじき煮」といった栄養価の高い和惣菜メニューを揃え、仕事や子育ての忙しい30~40代女性や単身者などをターゲットに展開している。

 食の供給課題にも対応したベネフィット商品に位置付けるのが、昨年9月発売の「もっとNippon!米粉が入ったカラッと!から揚げ粉」「米粉が入ったサクッと!天ぷら粉」の2品。22年から長引くウクライナ紛争で小麦粉の供給不安が払拭されない中、原料に国産小麦粉と米粉を使って開発した。

 双方の粉のバランス良い配合で食感の向上を実現しつつ、従来品より吸油率をから揚げ粉は15%、天ぷら粉は20%カットした機能性を併せ持つのが特徴。昨秋の発売以降、独自性の強い商品力で小売業への導入を着実に増やし、今後も小麦粉製品の価格安定化も視野に販売強化へ努めていく。8月下旬には期待の新商品として、吸油率20%カットを実現した「米粉が入ったザクザクッと!パン粉」を発売予定だ。

 昨今の国際情勢変動などで食糧危機が懸念される中、わが国の食料自給率は38%と極めて低い。一方で国内製造を行う乾物などの伝統食品は消費の先細りや後継者不足に苦慮し、放っておけば市場の縮小が避けられない。「海外から原料が買えなくなる最悪の事態も想定すれば、国産品の需要拡大は最重要課題。1次生産者を含む地域活性化への貢献も見据え、一層のブランド強化に努めたい」(岩波氏)と抱負を語る。