2024鈴鹿8耐プレビュー:注目チームやテスト結果をおさらい。EWCチャンピオンシップはヨシムラとYARTヤマハが1点差

AI要約

鈴鹿8時間耐久ロードレースが三重県・鈴鹿サーキットで開催される。

EWCフル参戦組にとって重要な一戦で、Team HRC with Japan Postが事前テストで総合トップタイムを記録。

様々な注目ポイントがあり、今年も熱いレースが期待される。

2024鈴鹿8耐プレビュー:注目チームやテスト結果をおさらい。EWCチャンピオンシップはヨシムラとYARTヤマハが1点差

 今年も鈴鹿に夏がやってきた。7月19日から21日にかけて、『2024 FIM世界耐久選手権(EWC)“コカ•コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会』が三重県・鈴鹿サーキットにて開催される。ここでは、注目チームやチェックしておきたいポイントなどを直前プレビューとして紹介しよう。

 鈴鹿8時間耐久ロードレースは、FIM世界耐久ロードレース選手権(EWC)の第3戦として開催される。ル・マン24時間、スパ・フランコルシャン8時間の2ラウンドを終了し、現在ヨシムラSERT Motulが88ポイントでランキングトップに君臨している。だが、1ポイント差でYART – YAMAHAが続いており、鈴鹿ラウンドはEWCフル参戦組にとって重要な一戦となることは間違いないだろう。

 水曜日に行われた事前テストでは、転倒による赤旗が相次ぐ中、Team HRC with Japan Post(高橋巧/ヨハン・ザルコ/名越哲平)が2分06秒119で総合トップタイムを記録した。総合2番手にはDUCATI Team KAGAYAMA(水野涼/ジョシュ・ウォータース/ハフィス・シャーリン)、3番手にはヨシムラSERT Motul(渥美心/アルベルト・アレナス/ダン・リンフット)が続いた。

 SSTクラストップは、総合17番手のTeam Étoile(ロベルト・ロルフォ/大久保光/亀井雄大)、エクスペリメンタルクラスとなるTeam SUZUKI CN CHALLENGE(生形秀之/濱原颯道/エティエンヌ・マッソン)は総合6番手で5回のセッションを終えた。

 記録樹立の可能性もいくつか紹介したい。まず、Team HRC with Japan Postの高橋巧に、単独最多優勝記録樹立のチャンスが訪れている。2023年大会の優勝により、宇川徹が持つ最多優勝の5回に記録を並べた最多優勝タイとなった。今大会で優勝すれば、6勝で単独最多優勝となるが、高橋自身は「(自己最多勝利は)結果として付いてくるものだと思っています」とコメント。自分自身の記録更新については、さほど意識していないように見える。

 そんな高橋が所属するTeam HRC with Japan Postは、2022年、2023年と2連覇を達成しており、今大会で優勝すれば3連覇となる。また、ホンダとしても30勝の記録がかかっている。そのためゼッケンは『33』ではなく『30』でエントリーしている。

 また、17チームにタイヤを供給している現在16連覇中のブリヂストンの、17連覇達成にも期待がかかる。

 昨年度はスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)やブリティッシュスーパーバイク選手権(BSB)から多くのライダーが鈴鹿8耐に参戦したが、今年は両選手権とも日程が被ってしまっている。代わりに、サマーブレークに入ったMotoGPから何人かの現役ライダーが日本に訪れ、鈴鹿8耐に参戦することとなった。

 2015年、2016年のMoto2チャンピオンでホンダ・カストロールLCRからMotoGPに参戦するヨハン・ザルコがTeam HRC with Japan Postから参戦することが、大きな話題を呼んでいる。また、Moto2ライダーのバリー・バルトゥスがAutoRace Ube Racing Teamより、同じくMoto2ライダーのマリオ・アジがSDG Team HARC-PRO. Hondaから参戦することとなり、6月19~20日に行われた事前テスト2回目よりチームに合流している。

 さらに、レースウイーク前週に、6月の事前テストで負傷したグレッグ・ブラックに変わり、2020年Moto3チャンピオンで現在Moto2に参戦中のアルベルト・アレナスがヨシムラSERT Motulより参戦することが発表された。アレナスはビザ取得の都合上水曜夜の到着となり、金曜日に初走行を行う。

 フル参戦組に着目すると、ポイントリーダーのヨシムラSERT Motulは、鈴鹿8耐ではリーザーブライダーの渥美心を今回はブルーライダー(第1ライダー)として採用。鈴鹿を得意とする渥美の走りに期待したい。

 また、ヨシムラSERT Motulと同じく日本のチームであるF.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/マイク・ディ・メリオ/アラン・テシェ)は今回から2024年型のホンダCBR1000RR-Rに乗り換える。6月の事前テストは不参加であったが、シェイクダウンも兼ねた水曜日のテストでは総合5番手と好発進だ。

 その他、昨年のチャンピオンチームのYART – YAMAHA(ニッコロ・カネパ/マービン・フリッツ/カレル・ハニカ)、BMWワークスチームのBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(マーカス・ライターベルガー/シルバン・ギュントーリ/イルヤ・ミハルチク)、フランスと日本の合同チームであるカワサキのKawasaki Webike Trickstar(グレゴリー・ルブラン/クリスチャン・ガマリーノ/ロマン・ラモス)など、役者は揃っている。それぞれのチームの走りを見るのが楽しみだ。

 昨年はNST(ナショナル・ストック)クラスとして鈴鹿8耐独自のクラス分けとなったSSTクラスが今年は復活する。フル参戦組からは日本のTeam Étoileはもちろんのこと、WÓJCIK RACING TEAM 777、NATIONAL MOTOS HONDA FMAが参戦してくる。

 そんなSSTクラスは、今年からダンロップタイヤのワンメイクとなっている。EWCの他3戦ではイギリスのダンロップタイヤを使用しているが、鈴鹿8耐のみ、住友ゴムの日本製ダンロップタイヤを使用する。それぞれのチーム、タイヤへの適応にも注目だ。

 また、国内の注目チームといえば、DUCATI Team KAGAYAMA(水野涼/ジョシュ・ウォータース/ハフィス・シャーリン)が挙げられる。今年、加賀山就臣監督によりドゥカティワークス仕様のパニガーレV4 Rが『黒船襲来』と銘打って全日本ロードレース選手権と鈴鹿8耐に持ち込まれた。ドゥカティファクトリーマシンでの耐久レース参戦は初となるため、レースでの走りは未知数となるが、事前テスト2回目ではトップタイム、水曜日の事前テストは2番手と、本番が楽しみになる走りを見せている。しかし、燃費は他チームと比べて良くないようで、どのような戦略が採られるかは決勝までわからない。

 また、サステナブルなアイテムを使用してレースに挑むTeam SUZUKI CN CHALLENGEの紹介も必要だろう。2022年を持ってレース部門を解体したスズキが、サステナブルなタイヤ、燃料、カウル、ブレーキなどのパーツを装着したGSX-R1000Rを持ち込んで参戦する。目標は「完走」だが、水曜日のテストは総合6番手。レースでの好走を期待せずにはいられない。

 その他の注目点に触れると、AutoRace Ube Racing Teamが秋元康プロデュースのアイドルグループ『WHITE SCORPION』と行うコラボレーションも見逃せない。同グループは『8フェス! LIVEステージ』に出演するほか、チームのナイトピットウォークにも搭乗を予定している。また、トップ10トライアル出走時には『WHITE SCORPION』の楽曲を流し、メンバーの顔写真が入ったスペシャルカラーリングで走行するという。昨年のスズキMotoGP復活カラーリングに続き、今年もサプライズを用意しているAutoRace Ube Racing Teamに注目だ。

 もうひとつ芸能人によるサプライズがある。元TOKIOのメンバーである長瀬智也が所属するバンド『Kode Talkers』の楽曲が、鈴鹿8耐の公式応援ソングとなったのだ。決勝日の夜、表彰式後に表彰台の上で同バンドによる演奏が行われることも発表された。レースが終わっても、帰れない理由ができてしまった。

 7月19日(金)には予選2回とナイトセッション、7月20日(土)にはトップ10トライアルが予定されている。7月21日(日)の決勝は11時30分にスタート、ゴールは日没後の19時30分だ。決勝の模様はJ SPORTSやBS12で生配信される。

 決勝日の天気予報は晴れ、気温は34度まで上がる模様で、鈴鹿8耐らしい灼熱の中でのレースが予想されるため現地で観戦される方は熱中症対策が必須となる。

[オートスポーツweb 2024年07月19日]