「鈴鹿8耐」二輪レースにサステナビリティをテーマに参戦 スズキの目指す未来を聞く

AI要約

2022年に二輪レースのファクトリー活動から撤退したスズキが、2024年の鈴鹿8時間耐久ロードレースにサステナビリティへの挑戦として参戦する。

新たなバイオ燃料や再生材料を使用した技術を導入し、環境に配慮した取り組みを展開。

MotoGPからの撤退を含め、サステナビリティの実現に向けた会社の取り組みに焦点を当て、持続可能な未来を目指す。

「鈴鹿8耐」二輪レースにサステナビリティをテーマに参戦 スズキの目指す未来を聞く

2022年シーズンをもって二輪レースのファクトリー活動から撤退したスズキは、2024年の鈴鹿8時間耐久ロードレース(※)にサステナビリティへの挑戦として参戦する。スズキ社内の組織を横断し構成されたチーム「チームスズキCNチャレンジ」は、バイオ由来の燃料や再生材料を使用したタイヤなど、環境に配慮した技術を導入、レース当日に向かって調整を進めている。

2024年6月、テスト走行をおこなっている三重県の鈴鹿サーキットで、プロジェクトリーダーの佐原伸一さんに、新たな挑戦がどのように環境問題に貢献し、未来の技術開発につながるのかを聞いた。(聞き手 朝日新聞SDGs ACTION!編集部・池田美樹)

(※)鈴鹿8時間耐久ロードレース

毎年夏に三重県鈴鹿サーキットで開催される国際的なオートバイ耐久レース。1978年から始まり、8時間での走行距離を競い合う耐久レースとして知られ、多くのトップライダーとチームが参加する。

【佐原伸一(さはら・しんいち)】

スズキ株式会社 二輪事業本部所属。スズキCNチャレンジのプロジェクトリーダー。30年以上にわたるキャリアの中で、MotoGPをはじめとするレースプロジェクトに長く関わる。現在はサステナビリティに焦点を当てた取り組みを推進し、持続可能な技術の開発と実用化に尽力中。

――佐原さんの現在の役割について教えてください。

私は現在、スズキの二輪事業本部に所属しており、今回のプロジェクト「スズキCNチャレンジ」のプロジェクトリーダーを務めています。30年以上のキャリアの中で、MotoGP(ロードレース世界選手権)(※)を始めとする多くのレースプロジェクトに関わってきましたが、今回は特にサステナビリティに焦点を当てた取り組みをおこなっています。

このプロジェクトは、カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発や、人材開発を推し進めることを主眼に、鈴鹿8時間耐久ロードレースにサステナブルなアイテムを使用して参戦するというものです。私はこのレースにおいてはチームディレクターとして、チーム全体の監督を担当しています。

(※)MotoGP(ロードレース世界選手権)

国際モーターサイクリズム連盟(FIM)が主催する世界最高クラスのオートバイレース選手権。プロトタイプの二輪車を使用し、世界各国で開催されるグランプリレースを通じて年間チャンピオンを決定する。

――スズキは一度MotoGPを含む二輪レースから退きました。今回参戦を決意した理由を教えてください。

レースから撤退した主な理由は、サステナビリティを実現するという会社の取り組みにリソースを集中させるためでした。その活動の一環として、レースを技術開発のフィールドとして利用し、サステナビリティの実現に向けた開発に取り組むことになりました。

そこで、EWC(世界耐久選手権)の主催者とスズキとの話し合いの中で、カーボンニュートラルやサステナビリティを推進することに合意しました。

スズキは、2023年のサステナビリティ報告書で、環境負荷を低減し、環境性能を向上させるために「マルチパスウェイ」という多角的なアプローチを取ることを明らかにしています。

このアプローチは、電動車両や水素エンジンの開発、再生可能エネルギーの利用など、さまざまな技術を組み合わせてカーボンニュートラルを実現する戦略で、スズキの持続可能な未来を目指す取り組みを具体化するものです。

今回の鈴鹿8時間耐久ロードレースへの参戦は、この「マルチパスウェイ」でのアプローチを実証する場として位置付けられています。

特に、バイオ由来の燃料や再生材料を使用したタイヤなど、新しい技術を実際のレース環境でテストし、その有効性を確認することが目的です。レースで得られたデータや知見を市販車の開発に反映させることで、より持続可能な製品を市場に提供することを目指しています。