アングル:中国の消費刺激策、家計は反応せず 債務返済や資産運用を優先

AI要約

中国の家計の預金残高が伸びを鈍化し、消費の増加につながっていない状況が明らかになっている。政府の消費刺激策も効果が限定されている。

個人消費の低迷の背景には、不動産価格の下落や雇用不安、高債務などが要因として挙げられる。消費者は資産運用や債務の返済を優先している。

政府は消費者への支援を強化し、構造的な問題に対処する必要があるとアナリストたちが指摘している。

アングル:中国の消費刺激策、家計は反応せず 債務返済や資産運用を優先

Kevin Yao

[北京 18日 ロイター] - 中国では家計の預金残高の伸びが鈍化し銀行が金利を引き下げているにもかかわらず、個人消費は政府の刺激策に反応していない。リスクを回避し債務の返済や資産運用を優先していることがうかがえる。

中国人民銀行(中央銀行)のデータによると、家計の新規預金は6月に2兆1400億元増えるなど上半期に9兆2700億元(1兆3000億ドル増加したが、前年比では22%減少した。

6月の家計の人民元建て預金残高は前年比10.6%増加したが、少なくとも過去3年間で最低に近い水準にとどまった。

中国では銀行への預金が鈍っているが、今週発表されたデータでは、これが消費の増加にはつながっていないことが示された。

6月の小売売上高は前年同月比2%増と予想を下回り、1年半ぶりの低い伸びとなった。デフレ圧力により企業が値下げを余儀なくされたためだ。

政府の消費刺激策が十分な効果を上げていないことを示しているとアナリストは指摘する。

OCBC銀行の中国圏調査部門責任者トミー・シー氏はメモで、貯蓄の伸びは鈍化しているが、消費の増加にはつながっていないとし、「これは家計がローンを早期に返済して負債を減らし、預金を資産運用商品に振り向けていることと関係しているかもしれない」と分析した。

預金金利の引き下げは消費と借り入れの促進が狙いだが、家計や企業は貯蓄を資産運用に回し、資産運用会社は資金を債券に振り向けている。

アナリストによると、不動産価格の下落や雇用不安、高債務などが重なり、家計が慎重姿勢を強めていることが個人消費低迷の背景にある。

中国の第2・四半期の成長率は4.7%と予想を下回り、第1・四半期の5.3%から鈍化した。

預金の伸びの鈍化は銀行融資とほぼ一致しており、先週発表された6月の融資残高は、需要が再び低迷していることを示している。

中国の預金残高は長期的には依然として成長の原動力となり得るが、対外貿易が抑制される中、過剰生産能力のリスクを踏まえると、政府は消費者への支援を強化すべきとの声が聞かれる。

6月末の家計の人民元預金は過去最高の146兆3000億元となった。家計、企業、政府の預金を合わせた6月の人民元預金総額は295兆7000億元に達し、中国本土の株式市場の時価総額73兆元や国内総生産(GDP)126兆元を大きく上回った。

メイバンクのアナリストはメモで「政策当局は一時的な刺激策ではなく、消費者のリスク回避行動の根本原因に対処し、消費を促す必要がある」と指摘。「そのためには長期にわたる不動産市場の低迷、不安定な雇用市場、不十分な社会保障、債務負担の増加といった根本的な問題を解決するための構造的な措置が求められる」と提言した。