《都心マンションの明暗》坪単価1300万円でも完売した「三田ガーデンヒルズ」と大量転売される「晴海フラッグ」の決定的な違い

AI要約

三田ガーデンヒルズと晴海フラッグのマンション市況について解説。

高騰する都心部のマンション価格と投資目的での購入増加。

金利上昇の影響や将来の不動産バブルの展開に注目。

《都心マンションの明暗》坪単価1300万円でも完売した「三田ガーデンヒルズ」と大量転売される「晴海フラッグ」の決定的な違い

 昨年2月に販売が始まった東京都港区の超高級分譲マンション「三田ガーデンヒルズ」。敷地面積は約2万5000平方メートルと港区最大、加えて2大ディベロッパーの三井不動産グループと三菱地所グループが手を組んだ大規模プロジェクトとして注目を集めた。最低でも2億円近い価格だったが5月、発売から1年強でついに「完売」したことが発表された。

 マンション市場は空前の好況で、都内の新築マンションは発表後に「即完売」するマンションも少なくない。そんななか、多くの注目を集めた三田ガーデンヒルズだが、完売するまでに約1年3か月かかっている。なぜ完売までにこれほどの時間がかかったのか──。マンションジャーナリストの榊淳司氏はこう解説する。

「これでも早く売れたほうでしょう。日本銀行前総裁の黒田東彦氏が異次元金融緩和を始めた2013年からマンションの価格は高騰し続けています。2012年であれば坪単価350万円ほどのエリアに立地する三田ガーデンヒルズが、今では坪単価が平均で1300万円から1400万円。現金で2億円、3億円をポンと出せるような飛び抜けた富裕層でないと購入は難しいのです。高額すぎる物件に対して“たった1年あまりで売れた”という言い方が正しいと思います」

 不動産市況の盛り上がりによって、投資目的でマンションを購入するケースも増えている。その代表例とみられているのが東京五輪の選手村を改修した「晴海フラッグ」だ。高騰する都心部のマンションと比べ、坪単価約300万円から400万円と割安だったことから申し込みが殺到。抽選倍率が最高で266倍になったことも報じられた。

 一方で、法人や外国人投資家が投資目的で取得するケースもあり、早くも多くの部屋が賃貸や転売に出されているようで、今年5月にはNHKが「3割以上の居住実態が確認できない」と報じて話題となった。中古マンションの大手情報サイトを覗くと多くの部屋が出ており、約70平方メートルの3LDKの部屋が1億2000万円ほどで売りに出されている。新築時の分譲価格では約7800万円とされていたため、約1.5倍の値段になっている。

「晴海フラッグは、住宅ローンを駆使して何とか購入し、投資に充てようとするサラリーマンなどが主要な購入者層となっているとみられています。端っから投資目的の人が多いため、購入後に一度も居住せず空室にしている人が多いようです。一時は転売が批判の対象となったため、中古市場への供給数はそれほど多くなかったのですが今年に入ってから急増した。ただ、今は購入価格の倍近い“強気の価格設定”が目立ちます。新築とはいえ、晴海や豊洲、月島などのエリアはタワマンがこの10年で増えてある程度の選択肢がある。今後は大量供給によって価格は段々と下がってくるはずですが、それまではなかなか手を出す人は少ないのではないか」(榊氏)

 今後、三田ガーデンヒルズも晴海フラッグと同じ道を辿る可能性はあるのか。榊氏が続ける。

「三田ガーデンヒルズは、不動産市場の成功例として早くも地位を確立しています。規模やグレードもさることながら、決め手はほかにない“圧倒的な立地条件”。港区のど真ん中で今後、これだけの規模の土地を捻出するのは難しいでしょう。異次元物件とも言えるため、希少性から値上がりの期待ができます。超高額ですが、富裕層はほしい物件についてはお金に糸目をつけませんから。もちろん投資目的で購入した人もいるでしょうが、価格が価格ですから大半は超富裕層が実需で購入している。晴海フラッグのように大量に転売されたり、賃貸に出されることは考えにくい」

 金利上昇がマンション市場に与える影響も無視できないが、今後、東京を中心に沸騰する「不動産バブル」はどのような展開を見せるのか。