クマの皮をレザークラフトに マタギの精神実践「捨てるところない」

AI要約

秋田県北秋田市の阿仁地区でマタギ文化の精神を実践し、狩猟で捨てられるクマの皮をレザークラフトに加工して販売する若者の取り組み。

クマの皮を捨てることが多い中、皮を処理し加工することで付加価値を生み出している。

製品化された革製品は、野生動物ならではの風合いがあり、一点ものの魅力を持っている。

クマの皮をレザークラフトに マタギの精神実践「捨てるところない」

 マタギ発祥の地とされる秋田県北秋田市の阿仁地区で、元地域おこし協力隊員としてマタギ文化の発信に携わった若者が、狩猟で捨てられることが多かったクマの皮をレザークラフトに加工して販売を始めた。「授かった命を余すことなくいかす」とのマタギの精神を実践する。

 男性は、北秋田市と八郎潟町で2拠点生活を送る高松市出身の山田健太郎さん(29)。大学時代に東北旅行で阿仁地区を訪れ、マタギが営む宿に宿泊してマタギ文化に興味を持った。

 2020年、大学卒業と同時に北秋田市の地域おこし協力隊員に着任し、大阪市から移住。狩猟免許を取得し、マタギ文化の普及などに取り組む傍ら、マタギの一員として山に入って活動した。協力隊員を2年間務めた後は、阿仁地区で山菜販売などを手掛ける事業を始めた。

 狩猟したクマは解体され、「捨てるところがない」と言われているが、山田さんによると、皮は処理や保存に手間がかかり、ほとんどが焼却処分されているという。「毛皮が敷物などに加工されるケースもあるが、やむを得ず捨てられてしまうのはもったいない。革に加工できれば、製品のバリエーションが増えて付加価値が付く」と話す。

■野生動物ならではの風合い

 クマが異常出没した昨夏、90頭分の皮を狩猟者らから譲ってもらい、東京の業者に皮のなめし作業を依頼。秋田市の革職人の協力を得て、財布やキーホルダー、かばんなどを製品化した。マタギの言葉でクマを「イタズ」と呼ぶため、ブランド名は「イタズレザー」にした。

 皮をはぐ際にナイフで付いた穴や、生きていたときにできた傷など、野生動物の革ならではの風合いが特徴。「同じ表情の革はなく、すべて一点もののおもしろさがある」という。

 山田さんは「革製品を通して、『授かった命を余すことなくいかす』というマタギから学んだ大切な教えを伝えていきたい」と話す。

 キーホルダーは2500円(税込み)。ポシェットは3万~5万円(同)。店舗やネットでの販売はせず、県内外で展示販売会を開く予定。販売会の予定はインスタグラム(@itaz_leather)で予告する。(滝沢隆史)