「部下をダメにする毒上司」と「部下を成長させる頭のいい上司」は“目標の立て方”が違う

AI要約

リーダーの任務は、チームのパフォーマンスを最大にし、組織・会社の業績を向上させることが重要。

部下の成長を促すためには、小さな目標を設定し、自己努力で達成できる目標を定めることが重要。

具体的な目標設定や努力の過程を通じて、メンバーのスキルアップを促すことが成功の鍵。

「部下をダメにする毒上司」と「部下を成長させる頭のいい上司」は“目標の立て方”が違う

 「部下が成長しない」「成果が出ない」そんな悩みを抱えるリーダーは少なくないだろう。積水ハウスで〝伝説〟と呼ばれるほどの業績を上げ、現在はタカマツハウスの代表取締役社長に就任した藤原元彦氏。わずか3年で売上高191億円を達成した急成長企業を支えるチームマネジメントの極意とは。『全員を稼ぐ社員にする、最強チームの作り方 落ちこぼれゼロの組織マネジメント』(ぱる出版)から、部下の成長を促し、チームの力を最大化する目標の立て方を紹介する。

● 「頑張れない社員」は目標の立て方から間違っている

 リーダーの任務は、チームのパフォーマンスを最大にし、組織・会社の業績を向上させることですが、そのためにはメンバー全員のスキルアップによる〝底上げ〟が不可欠です。

 メンバーに成長を求めず、長時間労働によって成果を出すことは既に過去の話。限られた時間の中でメンバーのスキルを向上させ、最大のパフォーマンスを発揮するマネジメントが求められています。

 タカマツではメンバーの心を湧き上がらせながら、近くて少し高い目標に果敢に挑戦して、挑戦する過程でメンバーのスキルを向上させるマネジメントを行っています。

 不動産の営業を経験したことの無いメンバーを集め、昨日よりも今日、今日よりも明日の自分が成長を実感できるマネジメントを行うことにより、短期間で好業績を上げました。そんなマネジメント手法をご紹介します。

 藤原(タカマツハウス代表取締役社長)はスキルアップを目指すべき社員に対し、マネジメントが行う最も重要なことは、小さなゴールを設定することだと言います。

 努力すればギリギリ達成できる絶妙のゴールを設定し、メンバーに達成感を感じてもらうことが重要です。実力の無い社員に大きなゴールを目指させても、そのゴールは遠すぎて小さすぎて見えないのです。見えないゴールに向けて精いっぱい頑張れる人はそうはいません。

 住宅メーカーの仕事を例にとると、用地仕入れ(土地を購入し契約を結ぶこと)において、本当の目的は土地を仕入れて契約を結ぶことです。そして、その土地がお客様の手に渡り、喜んでいただくことが大切です。

 しかし、不動産の経験がない人や、長い間成果が出せていない営業にとって、契約を結ぶのはとても遠い目標です。そんな目標を毎日頑張れと言っても、どう頑張ればいいかわかりません。

 そこで、小さな目標を設定することが必要です。契約に至るまでのプロセスを細かく分けて、今の実力で頑張れば達成できる目標を設定します。この目標を設定するためには、次の2つのことを意識する必要があります。

 (1) 自分の努力で達成できる目標

(2) 相手が関わり、自分だけでは達成できない目標

 住宅メーカーにおける仕入営業(土地や物件を購入する営業活動)では、訪問件数や電話営業、メールの件数は自分の努力で達成できる目標です。一方、案件取得件数や買付件数、仕入契約件数は取引先や競合がいるため、自分が頑張っても達成できない目標です。

 (1)の「自分の努力で達成できる目標」は、特に営業の初期段階で重要です。なぜなら、相手がいない分コントロールしやすいから。訪問の準備をし、効率的にエリアを回る計画を立て、訓練したトークやツールを使って訪問営業を行います。このときの目標は、具体的でなければなりません。

 具体性のない目標とは、「1日○件だから1週間で△件」のように、単純に数を足したり掛けたりして設定する目標です。

 具体的な目標とは、既に決まっている会議やアポイントを考慮して、“その日、その週の精いっぱいの努力で達成できる目標”です。

 例えば、週の目標を立てるとき、会議やアポイントがある時間を考慮して、「今週は月曜日の○時~△時まで訪問できるから□件」といった目標や、「アポと会議の間に外出訪問すると効率が悪いから、この時間は○件のメールを送る」といった目標を立てます。

 達成できるかどうかは、準備と行動力次第。達成できたら次の目標は少し難しい訪問先を設定し、より高いレベルの達成を目指します。こうして、自分の努力でできることを増やしていきます。