「新規事業」のアイデアに悩んだら…「戦略経営の父」が提言する、3つの可能性に分けた考え方【経営コンサルが解説】

AI要約

新規事業テーマを見つける際には成長マトリクスを活用することが役立つ。成長マトリクスでは市場/顧客と製品/技術の2つの軸を考慮し、4つに区分される。

新規事業テーマのアイデア出しは環境動向の分析を踏まえて行われるべきであり、競合他社との差別化を図る必要がある。

新規事業の展開を考える際、Dの領域への直接的な取り組みはリスクが高いため、BやCを経由して知見を得るアプローチも検討すべき。

「新規事業」のアイデアに悩んだら…「戦略経営の父」が提言する、3つの可能性に分けた考え方【経営コンサルが解説】

新規事業テーマがなかなか思いつかない、とあたまを抱える企業は多いでしょう。そのようなときには、「成長マトリクス」による分類法が役に立つかもしれません。本記事では、中野正也氏の著書『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)より一部を抜粋・再編集し、成長マトリクスを用いた新規事業開発について解説します。

新規事業テーマのアイデア出しは、社会・顧客のニーズの動向、競合企業の動向、など環境動向の分析を踏まえたうえでおこなうものです。このツールを使えば「自動的に適切な新規事業テーマが見つかる」とか、「誰から見ても有望なテーマが見つかり安心できる」などといったうまい方法はありません。

誰から見ても有望と思えるような新規事業テーマが見つかるということは、競合他社も同じように参入してくるおそれがあり、かえって不適切かもしれません。

新規事業テーマのアイデア出しは、やりがいがあり楽しい作業である反面、常にあたまを悩ませ苦労しながら、自社ならではの成功しそうな事業を探していく、孤独で疲れる作業であるともいえます。

しかし、新規事業テーマを発想するためのツールがまったくないわけではありません。それは、著名な経営学者で「戦略経営の父」といわれるアンゾフ氏が1957年に発表した「成長マトリクス」です。このチャートを下記図表に示します。

「成長マトリクス」から見る新規事業開発

成長マトリクスは、事業を「市場/顧客」と「製品/技術」の2つの軸のなかで位置づけて考えるものです。もともとの成長マトリクスでは、2つの軸は「市場」と「製品」とされていますが、ここでは新規事業テーマを発想しやすくするために少し拡張して記載しました。

それぞれの軸は、「既存」と「新規」に分けられ、全体で4つに区分されています。図の左下Aの部分は、既存市場に既存製品を提供する事業であり、既存事業を意味しています。この領域は、既存事業をこれまで以上に顧客に浸透させ、売上やシェアを拡大すべき領域です。

これに対してB~Dの領域は新規事業になります。

Bの領域は、既存の市場・顧客に対し、新製品を提供していくタイプの新規事業です。「製品」と表現していますが、サービスもここに含めて考えてください。すでにニーズ・状況がわかっている既存顧客に対する新たな事業展開ですので、図中では「土地勘のある市場への展開」と記載しました。

Cの領域は、既存の製品・技術を活用し、新規で未知の顧客を開拓するものです。新規顧客ですので、既存製品といってもそのまま通用することはまれです。新規顧客に向けて、既存製品を改良する必要があるかもしれません。しかし、基盤とする技術は共通していますので、知見のある技術を活用しながら、新規顧客のニーズに対応する製品を提供していくタイプの新規事業といえます。

Dの領域は、未知の市場に対し、これまた未知の技術を活用して事業展開するものです。技術面でも顧客面でも、手がかりのない分野への展開であり、落下傘で単騎、未知の土地に降りていくような事業になります。そこには先住民族ともいえる競合企業が待ち構えているものです。やみくもに展開しても成功確率は高くないでしょう。一般的に、Dの領域に直接取り組む新規事業開発は、あまりおススメできません。

ただしDの領域であっても、「明確にニーズがあるのに、それに応える製品を誰も提供していない」とか、「フランチャイズビジネスのように、資本や労力を提供すれば、製品やノウハウは提供され、集客が見込める」といった状況があるなどで、有望な新規事業の展開につながる場合もありますので、一概にダメとはいえません。

また、Dに直接展開するのではなく、BやCを経由して、BやCの領域の事業で得られた知見を手がかりとしてDに展開する、といった考え方であれば十分に可能性があります。アンゾフ氏はDの領域への新規事業展開を「多角化」と名付けています。