「後継者が見つからず閉店」の貼り紙から半年で復活 桜木町駅のそば店7代目夫婦が試みた採用策

AI要約

桃李屋として123年の歴史に幕を閉じた川村屋が、新たなオーナーによって復活したエピソード。

低価格で提供されるテンポのよいサービスと自家製つゆが特長の店舗の特徴。

加々本愛子さんが採用した経営戦略や工夫、こだわりについて。

「後継者が見つからず閉店」の貼り紙から半年で復活 桜木町駅のそば店7代目夫婦が試みた採用策

 「後継者が見つからず閉店します」。横浜市のJR桜木町駅に隣接するそば店・川村屋は2023年3月、そんな貼り紙を掲げ、123年の歴史に一度幕を閉じました。そこからわずか半年。同じ屋号と場所で店を復活させたのは、父の後を継いだ、7代目の加々本愛子さん(32)でした。9年勤務した大手IT企業を退職して覚悟の転身。起業家でもある夫と、ネットを活用した人材募集で若い従業員を集め、調理などのオペレーションも見直しながら、1日千人もの客に「変わらぬおいしさ」を提供し続けています。

 桜木町駅の改札に近づくと、すぐ脇にある川村屋から、かつお節など天然だしを使った手作りのつゆが豊かに漂い、鼻をくすぐります。川村屋のメニューは天ぷらそば、うどん、いなりずしなど約15種類、一杯500円前後という低価格も魅力です。

 看板商品は「とり肉そば」(440円)。山梨県産のブランド鶏をヨーグルトに2日間漬け込んだ、やわらかな食感が特長です。

 定休日は年末年始のみ。17人の従業員を抱え、毎日4人程度の体制で朝7時半からオープンします。客層は40~60代の男性が中心ですが、女性の一人客や子ども連れ、外国人観光客など、毎日千人前後が訪れます。

 駅の隣という立地からスピードを重視。東京都内の製麺所からゆで麺を届けてもらい、天ぷらは横浜市内の専門店からかき揚げなど数種類を仕入れ、食券での注文から1~2分で完成します。

 低価格で提供するため、メニュー数はできるだけ絞ってオペレーションを簡素化。天ぷらはエビではなく、手ごろな価格のアジやキスなどを用意しています。

 「こだわりは天然だしを使った自家製つゆです。濃い口しょうゆを使った関東風の味わいで、そばや天ぷらとの一体感を楽しんでもらえるように工夫しています」と加々本さんは胸を張ります。

 できたての香りや味を届けたいと、寸胴で1日約8回に分け、いずれも毎回だしを取るところから始めます。これまで女性従業員が多かったことから、重い寸胴を何度も持ち上げなくてもいい作業工程にしているそうです。