多くの人が驚愕…「みかんの主力産地」が「東北」になる日がやってくる

AI要約

将来の日本の人口減少による影響と対策について解説。主に農業の将来に焦点を当て、気候変動や食料不足、農地の限界などを取り上げる。

日本の食料自給率低下や農業の課題について詳述。労働力不足と地形的な制約による増産の難しさを指摘。

農業の大規模化や耕作放棄地の再利用など、食料確保のための取り組みについて提案。

多くの人が驚愕…「みかんの主力産地」が「東北」になる日がやってくる

国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

日本農業がビジネスモデルを変えざるを得ないのは、農業従事者の減少だけが理由ではない。温暖化の影響も差し迫っている。

国交省の資料によれば、21世紀の日本の年平均気温は20世紀末と比べて最悪3.4~4.5℃上昇する可能性があるとされるが、ここまで上昇すれば収穫量の減少や品質の低下を招き、栽培適地も大きく変わるだろう。

とりわけ西日本各地への影響が大きい。温州みかんの場合、栽培に適した温度域は15~18℃だが、現在の主力産地の多くは2060年代には18℃より高い温度域へと転じ、温州みかんの主力産地は東北や北陸などへ移るというのだ。米も2031年以降、関東や北陸以西の平野部では高品質のブランド米が作りづらくなると予測している。

ただでさえ、農業の担い手不足が深刻化していくのに、栽培ノウハウを長年蓄積してきた品種を思うように作れなくなったならば、ますます引退する人が増えるだろう。既存農業を根底から変えるかもしれない温暖化対策を零細な農家が個別に対応するのは無理がある。いまのうちに生産基盤を強化して“迎撃態勢”を整えることだ。

農業に関しては、経営基盤の強化策だけでなく、世界的な食糧不足が待ち受けているということも併せて考える必要がある。そのためには、農業だけでなく、食品メーカーなど関連業種も含めた「食品産業」として捉えることが求められる。

日本は「輸入してまで食べ残す国」と言われてきたが、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻による世界的は食料・肥料の高騰で、“安定的な食料輸入”がいかに幻想であるかを思い知らされた。これはエネルギーの確保にも言えることだが、世界人口は爆発的に増え続けており、今後の需要はさらに伸びる。長期的に世界規模での不足状況が続くのである。人口減少で経済力が衰えていく日本が、いつまで食料やエネルギーの輸入大国でいられるか分からない。言うまでもなく、食料確保は安全保障戦略の主柱だ。農業基盤の強靭化は国家的課題でもある。

農水省によれば、2020年度の日本の食料自給率は「カロリーベース」で過去最低の37%となった。国際的に主流の「生産額ベース」で見ても67%にすぎない。自給率向上が求められるが、勤労世代が不足していく日本において食料を増産することは簡単ではない。しかも、山地の多い日本では農地に適した土地は限られているという地形的な制約もある。農地面積のパイが限られる以上、例えば小麦などの国内生産を増やせば、その分だけ既存の品目を減らさなければならなくなるのである。

こうした状況で生産量を増やすには、耕作放棄地を“現役の農地”としてよみがえらせることだが、宅地などへの転用で戻せる土地は減り続けている。2021年の農地面積は435万ヘクタールだ。最大だった1961年と比べて約174万ヘクタール減少した。20年の荒廃農地面積は28.2万ヘクタールに及んでいる。農用地区域だけでも13.6万ヘクタールで、このうち8.1万ヘクタールは再生利用が困難とされる。こうした動きを少しでも食い止めるためにも、農業の大規模化が急がれる。

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。