最低賃金「1500円」で本当に「足りる」のか…日本の人手不足を急速に悪化させる「深刻な問題」

AI要約

厚生労働省の中央最低賃金審議会が最低賃金を決定する季節がやってきた。都道府県別の改定が7月末に答申され、10月から順次適用される。

2023年の最低賃金は時給1004円で、昨年から4.5%増加した。政府は最低賃金の引き上げを進めており、実質的な伸び率は0.8%と伸びは鈍化している。

政府は最低賃金を2030年代半ばに全国加重平均1500円に引き上げる目標を掲げており、労働生産性の向上にも取り組む予定である。

最低賃金「1500円」で本当に「足りる」のか…日本の人手不足を急速に悪化させる「深刻な問題」

日本の最低賃金を決める季節がやってきた。厚生労働省の中央最低賃金審議会の議論が始まり、7月末には都道府県別の最低賃金改定の「目安」が答申される。これを受けて都道府県の最低賃金審議会が8月に改定額を取りまとめ、10月から順次適用される。

2023年の最低賃金は全国加重平均で時給1004円と前の年から4.5%増えた。最高の東京都が1113円、最低の沖縄県と徳島県が896円だった。「物価上昇を上回る賃上げ」を掲げる岸田文雄内閣は、最低賃金の引き上げも進め、2021年の3.1%増、2022年の3.3%増に比べて伸び率は上回ったものの、物価上昇率が3.7%に達したことから、2023年の実質的な伸び率は0.8%と、2022年の1.0%に及ばなかった。それだけに、今年の最低賃金がどれぐらい引き上げられるかに注目が集まっている。

2023年は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」で、2022年に961円だった「全国加重平均1000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論を行う」とし、実際、1000円を突破した。その後、8月の新しい資本主義実現会議では岸田首相が「引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の賃上げ額についてしっかりと御議論いただき、その積み上げにより2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指してまいります」と、初めて1500円という目標を掲げた。もっとも、その達成時期を2030年代半ばとしたことには批判の声が上った。

そんなこともあって、今年の「骨太の方針2024」では、次のように書き込まれた。

「2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円となることを目指すとした目標について、より早く達成ができるよう、労働生産性の引上げに向けて、自動化・省力化投資の支援、事業承継やM&Aの環境整備に取り組む」

1500円の達成を前倒しするとしたが、その達成時期については明言していない。仮に5%ずつ引き上げても達成は2030年ということになる。

問題は物価上昇が続く中で、1500円という最低賃金で妥当なのか、という問題だ。最低賃金で働いてきるパートやアルバイトなど非正規雇用の人たちの生活困窮度は日に日に高まっている。株価や土地など資産価格の上昇で、持てる者と持たざる者の格差は広がっている。