〈深刻な「大工」不足〉生産性向上や外国人労働者では補いきれない、なり手不足の根本的な原因とは?

AI要約

図1によると、大工の人数は減少傾向にあり、賃金の低さがその背景にある。

図2からは、大工の賃金が全産業平均よりも低く、長期停滞が続いていることが分かる。

大工の生産性は上昇しているが、賃金の上昇には反映されず、賃金の実質的な変化はほとんどない。

〈深刻な「大工」不足〉生産性向上や外国人労働者では補いきれない、なり手不足の根本的な原因とは?

 大工が足りないと言われている。大工の人数は5年ごとの国勢調査でしか分からないので、毎年の人数を内挿、外挿して推計したのが図1である。

 図に見るように、2001年には60万以上いた大工が22年では30万人を割っている。この勢いで減っていくと40年には5万人になってしまい、建設現場の人手不足は深刻化が避けられない。なぜ大工が減っていくかと言えば、賃金が上がらないからだ。

 図2は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」で大工の賃金を見たものである。大工の年間給与は、22年で407万円で、全産業平均の463万円よりかなり低い。

 長期停滞の中で、全産業平均の給与も上がっていないのだが、全産業平均に対する大工給与は15年を除いてつねに1を下回っていた。15年に大工給与が上がったのは、それ以前、リーマンショックの後、給与が減り続けていたことの反動だろう。

 ただし、この間、全産業の年間平均給与は0.988倍と低下していたが、大工給与は1.092倍になっていた。すなわち、大工の賃金が相対的にもっとも低かったのは04年の0.734倍で、その後22年には0.879倍まで差を縮めた。

 ところが大工の生産性は上昇している。図3に見るように、01年から22年で、大工1人当たりの建築面積は1.466倍、建築戸数では1.705倍になっている。

 戸数で見た生産性が面積で見た生産性より上がっているということは、一戸当たりの建築面積が低下したということである。一戸当たりの建築面積は、01年の92.7平方メートル(㎡)から22年の79.8㎡まで低下している(なお、この間で世帯当たりの人数が減っているので、必ずしも1人当たりの住宅面積が狭くなっている訳ではない)。

 大きな家を作るより、小さな家を作る方が面倒だから、真の生産性は、1.466倍と1.705倍の間の1.6倍くらいだろう。生産性が1.6倍になっているのだから給与も1.6倍になっても良いのではないかと思うのだが、前述のように、1.092倍にしかならなかった。

 しかも、大工生産性は実質の概念だが、年間給与は名目である。01年から22年までで消費者物価は1.058倍になっている。すなわち、実質の大工年間給与は1.032倍(1.092÷1.058)にしかなっておらず、ほぼ変わっていないと言える。