懐潤う個人が日本株買い、高い関心の1200万円層-NISA経由3兆円

AI要約

所得環境の改善により個人投資家が前向きな姿勢を示し、日本株相場が押し上げられる可能性がある。

基本給の伸びが加速し、賃金と物価の好循環が株式市場の期待感を高めている。

所得環境の見通しの明るさや新NISAなどが個人の株式投資を後押ししている。

懐潤う個人が日本株買い、高い関心の1200万円層-NISA経由3兆円

(ブルームバーグ): 所得環境の改善を受け個人投資家が株式投資に前向きな姿勢を強めており、史上最高値圏で推移する日本株相場をさらに押し上げる可能性がある。

厚生労働省が8日に発表した5月の毎月勤労統計調査によると、基本給に当たる所定内給与が前年同月比2.5%増と前の月の1.8%増から伸びが加速し、伸び率は1993年1月以来の大きさとなった。物価と賃金の好循環の実現に対する株式市場の期待感が保たれた格好だ。

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野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは、所得環境の見通しが明るくなると株高期待が強まる傾向があると指摘。根拠として、内閣府が毎月公表する消費動向調査で資産価値に対する関心が高まっている点を挙げた。潜在的な投資家層に当たる世帯年収1200万円以上の層で、所有する株式や土地などの資産価値についての意識が2013年以来の高水準で推移しているという。

同水準は最近の株価の上げ幅と比較しても極めて高く、所得環境の改善が強気の見方に反映されている可能性が高いと須田氏は分析。自身の所得見通しの改善で景気拡大を実感するだけでなく、デフレ脱却やインフレ定着シナリオへの確信を強めるという二つの経路から、株高期待につながりやすいと話している。

個人の積極的な株式投資に対する姿勢を後押しするのは所得環境だけではない。今年改正された少額投資非課税制度(新NISA)もその一つだ。

日本証券業協会が大手証券10社への聞き取りを基にまとめた資料によると、1-5月のNISA経由の買い付け総額は6兆6000億円で、このうち国内株式の比率は44%で3兆円弱だった。統計データの基準は異なるが、東京証券取引所が公表する投資部門別売買状況のデータでは個人は昨年、日本株を2兆9000億円売り越していた。

JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、7月に入ってからアクティブな個人投資家に人気の高い高配当株などへの買いが急増していると説明。例年、ボーナスの支給時期には現物株買いが増える傾向があり、今年も日本株市場に流れてきたようだ。