「狭義のビール」軒並み好調、販売数量比率は16年ぶり上期5割超え 背景に若者回帰も

AI要約

ビール大手4社の今年上期の販売動向が概観された。市場縮小が進む中、従来のビールの販売が好調で5割を超え、若者のビール回帰が見られた。

キリンビールの新ブランド「晴れ風」の売れ行きが好調で、一番搾りも増加。サッポロビールは主力「黒ラベル」が前年比14%増で全体を牽引した。

アサヒビールは主力「スーパードライ」が増加し、コンセプトショップ展開や体験型イベントで若者層へのアプローチ強化。サントリーは若年層向け「サントリー生ビール」の販売増強に注力している。

ビール大手4社の今年上期(1~6月)の販売動向が10日、出そろった。人口減少や若者のビール離れで市場縮小が進み、発泡酒などを含むビール類の販売数量などは前年比マイナスが目立った。だが、令和8年のビール系飲料の税率一本化に向け、手ごろになっている従来のビール(狭義のビール)が軒並み好調で、ビール類全体に占める販売数量は上期として16年ぶりに5割を超えた。若年層向けのPR強化が「若者のビール回帰」につながったとの背景分析もある。

■「ここまで売れるとは…」

「酒税改正が追い風になっているとはいえ、ここまで売れるとは…」。キリンビールの担当者は4月に発売したビールの新ブランド「晴れ風」の売れ行きに目を丸くする。年間販売目標も当初の430万ケースから、550万ケースに上方修正したことを明かした。

酸味や苦味を抑えた飲みやすさで若者に訴求し、広告も若者に人気の俳優を起用。普段、ビールを飲まない層からの需要が増えたという。主力ブランド「一番搾り」も前年比増となり、「懸念した需要の食い合いが起きていない」と〝ビール回帰〟を実感している。

■「黒ラベル」前年比14%増

サッポロビールは主力の「黒ラベル」が前年比14%増と全体を牽引し、ビール類全体でも4社で唯一、前年比プラスとなった。

テレビCMなどでは若者に対し、ビールは大人の飲み物であり、「大人はかっこいい」(担当者)というイメージ戦略を一貫して打ち出してきた。

黒ラベルの売り上げは平成26年から新型コロナウイルス禍で途切れるまで7年連続で伸びていたといい、担当者は体験型イベントの実施などにも触れ、「急に伸びたわけではなく、地道にやってきた成果が目に見えてきた」と説明した。

■若年層アプローチ強化

主力ブランド「スーパードライ」が4%増と強さを見せるアサヒビールは、今年9月末まで東京・銀座でコンセプトショップを展開。最高品質のスーパードライが楽しめるほか、機械でビールの泡に文字や画像を描く「泡アート」などの体験が可能だ。また、アーティストやeスポーツとのコラボレーションなど、若者向けイベントで需要の掘り起こしを進める。

主力の「ザ・プレミアム・モルツ」が1%増で、ビール類全体では5%減と4社の中では出遅れたサントリーだが、昨年4月発売の好調な「サントリー生ビール」に活路を見いだす。多田寅(すすむ)常務執行役員は今月8日の記者会見で、取り扱い店舗数の年内計画を当初の約1・3倍となる2万店に増強することを明かし、「40代以下の若年層へのアプローチをさらに強化する」と巻き返しを図っている。(福田涼太郎)