サントリーが下期のビール事業戦略を発表、「金麦」で2つの挑戦

AI要約

サントリーは7月8日、ビール事業に関する発表会を開催し、多田寅氏がビール事業の動向と戦略を説明した。

多田氏は2026年10月の酒税改正について言及し、各ブランドの位置づけを強調した。また、2024年上期の実績や今後の展望についても述べた。

下期の戦略として、各ブランドの魅力向上や新たな挑戦を掲げ、消費者ニーズに対応する姿勢を示した。

サントリーが下期のビール事業戦略を発表、「金麦」で2つの挑戦

 サントリーは7月8日、ビール事業に関する発表会を開催し、常務執行役員 ビール本部長の多田寅氏が直近の動向と下期の戦略を説明した。

 多田氏は、「2026年10月に3回目の最終的な酒税改正があり、ビール、発泡酒、新ジャンルの税率が350ml缶換算で一律54.25円になる。サントリーとしては、そうなったとしても価格差はつくと見立てており、プレミアムビールのザ・プレミアム・モルツ(プレモル)、スタンダードビールのサントリー生ビール、機能系のパーフェクトサントリービール(PSB)、エコノミーの金麦ということで、引き続きこのポートフォリオでしっかりとお客さま接点を作っていく」とする。

 これまでの酒税改正の流れの中で、狭義のビールの比率が高まる傾向にあるが、同社では2030年においても価格差を背景にエコノミー市場が5割弱を占めると予測している。

 続いて同氏は2024年上期の実績を示した。ビール類の出荷量は、市場全体が前年比97%と推定されるのに対し、同社は同95%とやや出遅れた格好。ジャンル別に見ると、税率が上がり向かい風状態にある新ジャンルが市場全体で同79%と推定されるのに対し、同社の金麦は同91%と健闘。

 狭義のビールについては、市場全体が前年比107%と推定されるのに対し、同社は同102%となった。ブランド別では、プレモル、PSBが前年超え、今期注力するとしているサントリー生ビールは前年比130%となっており、同氏は「引き続きお客さまの支持を得ていると認識している」と語る。

 看板商品となるプレモルについては、2月から「いい日、プレモル」という新メッセージを訴求してきたことで、新規ユーザーの獲得につながったと評価。サントリー生ビールについては、3月から飲食店向けの瓶や樽の取り扱いをスタートしたことで、店舗でおいしさを実感した人が家庭向けの缶商品を購入する流れを作れているという。

 こうした状況を受け、下期については「ブランドの魅力向上」「良質な飲用接点」「新たな挑戦」の3つを意識して多様化する消費者ニーズに対応していくとする。

 プレモルでは、引き続きシーンに寄り添った提案を行なうとともに、飲食店での飲用時品質をさらに追求するといった上期の戦略を継続。「今年はリアルに人が集まり、一緒に乾杯するシーンが増える夏になる」(多田氏)として、気温の上昇とともにビールを飲みたくなる夏に向け、限定デザインの“ハート缶”を販売するなど、飲んでみようと思えるような演出を行なっていく。

 サントリー生ビールについては、「これからの定番として何をしなければいけないか。まだまだ接点が足りない」(多田氏)として、40代以下の若年層へのアプローチを強化。テレビCMなどで使われているオリジナルマグジョッキへの反響が大きかったことから、9月1日~11月26日にかけて「名前入りMYサン生ジョッキ」をプレゼントするキャンペーンを展開する。

 金麦については、前述の通り、厳しい市場環境にありながらも、新しい提案、新しいチャレンジを行なうことで、市場の活性化を図りたいとする。

 9月10日発売の「金麦〈帰り道の金木犀〉」については、「多くの皆さまが体験したようなことをネーミングとデザインと中味で表現したかった。秋の夕暮れの帰り道に金木犀がパッと香る感じ、と話すと、少し情緒的にどこかのシーン、幼少だった頃を思い出したりすることもある。それをパッケージにした。中味もアンバーエールタイプとすることで、思い描いていただいた感じと中味がしっかりと合致する」(多田氏)とアピール。

 また、4月に北海道限定で販売していた「金麦サワー」も10月15日に30万ケースの数量限定で全国発売する。多田氏によれば、ビール類とRTD(Ready To Drink)の併買ユーザー5年間で約1.5倍に増加していることから、金麦ブランドでRTDが担っている2杯目需要を獲得することを目指したのが同商品となる。北海道での売れ行きが好調で、狙い通りビール類ユーザー、RTDユーザーの両方に受け入れられたことから、全国販売に踏み切ったとしている。

 2022年に誕生した「ビアボール」については、それまでの“炭酸でつくる自由なビール”という訴求を改め、今年5月から“割り方いろいろ!楽しめるお酒「ビアボール」”という訴求に変更。こうしたメッセージが普段あまりお酒を飲まないライト層や20~30代の若年層に響いているとして、下期も継続展開することで定着を図っていく。

 多田氏は最後に2024年通期の販売計画を示した。こちらの内容は年初に発表した販売計画から変更はなく、上期に苦戦しているカテゴリーがあることを考えると、かなり意欲的な数字と言えるかもしれない。