ロシアの人民元利用が伸び悩み、二次制裁リスクで中国の銀行が尻込み

AI要約

ロシアはウクライナ侵攻に伴い、西側の金融システムから締め出され、中国人民元の利用を急速に進めているが、米国の二次制裁の脅威が限界に達している可能性がある。

中国はロシアとの対中貿易を強化し、ロシアの経済の人民元化が急速に進んでいる。

他国との取引が制約される中、ロシアは中国が提供する資金調達や商品取引を活用しているが、米国の制裁により課題が生じている。

(ブルームバーグ): ロシアはプーチン大統領が始めたウクライナ侵攻で西側の金融システムから締め出され、それを補おうと中国人民元の利用を急速に進めてきた。だが、それも限界に達している可能性がある。

ロシアと取引を続けている国には、米国の圧力が強まっている。とりわけ恐れられているのは二次制裁で、これが二国間の貿易や決済を阻害し、ロシアの人民元利用拡大を抑える有効なブレーキとなっている。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のロシア担当エコノミスト、アレックス・イサコフ氏は「中国の銀行が融通する用意がある以上に、ロシア側が人民元を利用したがっているかもしれない」との見方を示した。「米国の二次制裁の脅威が銀行を尻込みさせている」と述べ、ロシアでの人民元不足や中国の銀行間にロシアへの流動性提供を渋る動きがあることを市場は示唆していると指摘した。

イエレン米財務長官は昨年12月、「ロシアの戦争マシンへの供給を手助けする金融機関に対して、決定的で外科的な行動」を米国はためらわないと断言。この発言以降、ロシアと中国の人民元翌日物借入金利の相違は劇的に広がり、数ポイント以上に上る。昨年12月に米国は外国金融企業に対する二次制裁を承認し、中国国有銀行はロシア顧客の資金調達に対する制限を強化した。

中国税関のデータによると、ロシアの対中貿易額は2年間で60%余り増えて2023年には2400億ドル(約38兆6500億円)に達し、ドイツやオーストラリア、ベトナムを追い抜いた。中国はロシアの石油などコモディティーを割安な値段で購入する一方、ロシアは消費財やハイテク製品への幅広いアクセスを得ている。

結果として、中国はロシアの主要貿易相手国となり、ロシアの輸出入決済の約40%、ロシアの外国為替市場における取引の半分以上を今や人民元が占めるようになった。ウクライナ侵攻開始前の2022年初め時点でロシアの人民元利用がほぼゼロだったことを考えると、ロシア経済の人民元化がいかに急激だったかが明らかだ。