<ユニクロ、アップル独走の理由>競合との比較ではない、ライバルを淘汰する真の差別化戦略とは

AI要約

競合他社が大ヒットした商品を真似ても差別化は困難。

ユニクロの成功は、常識を打ち破り顧客に集中した結果。

真の差別化は顧客以上に顧客を考えることにあり。

<ユニクロ、アップル独走の理由>競合との比較ではない、ライバルを淘汰する真の差別化戦略とは

<今月のお悩み>

■競合他社が発売した新商品が大ヒットしています。差別化を図りたいと思っていますが、妙案はありますか? 1998年、ファッションの先端地である東京・原宿に開店すると、多くの来店客を驚かせ、地方都市の繁盛店に過ぎなかった「ユニクロ」の飛躍を決定づけた商品がある。

 大量陳列された色さまざまのフリースは一躍ブームを巻き起こし、2000年には2600万枚を売り上げる大ヒットを記録した。もっとも、フリースはファーストリテイリングが開発したものではない。すでにアウトドアメーカーによって商品化され、登山やアウトドアなど限られた用途に向けた高級品という常識があった。その常識を打ち破り、ユニクロは1900円で売り出したのである。

 その後も同社はヒートテック、ブラトップなどのヒット商品を開発し、今日では、ユニクロの衣類は一人一着は必ず持っている「国民服」といわれている。もし、「ヒートテックはスポーツ用品メーカーのもの」「ブラトップは下着メーカーのもの」という常識に囚われていたら、同社の今日はないだろう。

 「業界は過去、顧客は未来、ライバルではなく顧客に集中する」とは、同社の柳井正代表取締役会長兼社長の言葉である。

 ユニクロのヒットを真似て、多くの同業他社が小手先の差別化をして追随した。しかし、脅威が待ち構えるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛び込むファーストペンギンほどの成果は得られなかった。業界内を見渡して「差別化」と言っている限り、企業でも個人でも、ライバルには勝てない。注目すべきは業界の外である。いまや全都道府県の事業所にある置き菓子「オフィスグリコ」は、富山発祥の置き薬をヒントに考案したといわれている。

 柳井氏は「顧客は未来」「顧客に集中する」と言っている。では、「顧客」はどのような存在であり、どのように集中すべきだろうか。

 「顧客は常に正しい」とは、米国の百貨店経営者、マーシャル・フィールドの言葉として知られている。米国東部の人気スーパーマーケット「スチューレオナルド」ではこの言葉をルール1とし、ルール2として「顧客が間違った場合、ルール1を読み返せ」と続け、事業の根本に顧客を置いている。

 一方、アップル創業者のスティーブ・ジョブズはこう言い、底の浅い安直な顧客理解を戒めている。

 「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルがバラを10本贈ったら、君は15本贈るだろうか? そう思った時点で君の負けだ。その女性が何を望んでいるのか、見極めることが重要なんだ」

 たしかに、いまでは生活に必要不可欠な存在ともいえるスマートフォンの元祖「iPhone」が07年に発売される前、顧客は誰一人としてそのような商品ができることをイメージしていなかったはずだ。

 顧客以上に顧客のことを考える──。真の差別化はその先にあり、自社の独自性も同様である。

【商いの言葉】

業界は過去であり顧客は未来そのもの

ライバルを気にするより顧客に全力を注ごう