企業の借入金利、半数超が前年度から「上昇」 上昇幅最多は「+0.1%未満」、平均借入金利3年ぶり1%台

AI要約

日本銀行のマイナス金利政策解除後、企業の借入金利が上昇しており、多くの企業が金利上昇を実感している。

2023年度の決算では、約4.3万社の半数以上が前年度に比べて借入金利が上昇し、企業の平均借入金利も3年ぶりに1%を超えた。

金利上昇が続き、借入金利が過去5年で初めて上昇を経験する企業が増加しており、ポストコロナ時代に向けて金利上昇の局面に突入している。

企業の借入金利、半数超が前年度から「上昇」 上昇幅最多は「+0.1%未満」、平均借入金利3年ぶり1%台

 日本銀行がマイナス金利政策の解除を決定して3ヵ月が経過した。この間、短期金利が低水準で推移する一方、国内債券市場では長期金利が11年ぶりに一時1%台まで上昇したほか、国内金融機関では預金金利の引き上げといった動きが進み、「金利のある世界」への突入が鮮明となっている。

 企業でも支払利息が増加するなどの影響が出始めており、5月末時点で2022-23年度(4‐3月)の決算が比較可能な約8万社の借入金利を調査した結果、半数超の約4.3万社で前年度から借入金利が「上昇」したことが判明した。借入金利の平均(2023年度・速報値)は3年ぶりに1%を超える結果となり、多くの企業経営者が金利上昇を実感するケースが増加している。

 日本銀行は3月19日の金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を正式に決定した。政策金利の引き上げは約17年ぶりとなる。日銀が国債保有額を縮小する「量的引き締め」の方針を示すなど金融政策の正常化を進める中で、2022年度末時点で平均1%を下回った企業の借入金利も、市場金利に連動して緩やかに上昇していくことが見込まれる。

 帝国データバンクでは、2023年度(2023年4月-24年3月期)の決算が判明した企業で、長短借入金を含む有利子負債を有する約8万社を対象に、借入金利の状況について分析を行った。企業の決算情報は、24年5月末時点の判明分に基づく。

 この結果、2023年度決算における借入金利が前年度に比べて「上昇」した企業の割合は54.9%(約4.3万社)に上り、「低下」(41.9%)を上回った。コロナ禍で実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の導入が急速に進んだ20年度には借入金利が「低下」となった企業が63.9%を占め、過去5年間で「低下」の割合が最も高かった。その後、23年度は過去5年間で初めて唯一「上昇」が「低下」を上回り、「上昇」の割合が50%を超えて最も高くなった。借入金利はポストコロナに向けて上昇局面に突入したとみられる。

 金利が上昇した約4.3万社の金利上昇幅を見ると、最も多かったのは「+0.1%未満」の約1.5万社・35.0%で、多くが前年度から微増にとどまった。以下、「+0.1%台」(20.6%)、「+0.2%台」(12.0%)と続いた。一方、金利上昇が「+0.6%以上」となった企業も15.4%を占めた。「上昇」した企業における上昇幅の平均は+0.23%だった。

 また、2023年度の企業の平均借入金利は1.02%(速報値)となり、前年度から0.04ポイント上昇したほか、20年度以来3年ぶりに1%を超えた。企業の借入金利は2007年度(2.33%)をピークに21年度まで14年連続で低下したものの、ゼロゼロ融資の元本返済開始に伴う無利子の借入金減少などを背景に、22年度以降は上昇傾向に転じている。