投資判断を左右する「経営者メッセージ」、響く伝え方は? オリックス、塩野義製薬の統合報告書に見る

AI要約

統合報告書の発行企業数は年々増加し、2023年には1000社を超えました。

投資家が社長メッセージに注目し、期待する理由について解説されています。

投資家は社長メッセージから経営者の価値観やビジョンを読み取り、投資判断に活かしています。

投資判断を左右する「経営者メッセージ」、響く伝え方は? オリックス、塩野義製薬の統合報告書に見る

 統合報告書の発行企業数は年々増加しており、2023年には1000社を超えました。統合報告書にはさまざまなコンテンツがありますが、中でも投資家からの注目度が高いのが社長メッセージ(トップメッセージ)です。

 今回は、「投資家は社長メッセージから何を読み取っているのか」「どのような社長メッセージが投資家から評価されるのか」について考察していきます。

 人的資本開示の義務化をはじめとするサステナビリティ情報の開示要請や、新NISAのスタートに伴う投資への関心の高まりなどを受けて、企業における投資家向けの情報開示は近年活発化しています。特に統合報告書は、プライム市場を中心にスタンダードなレポートとして注目が集まっており、2023年には発行企業数が1000社の大台に乗りました。

 その中でも、投資家の注目度が高いコンテンツが社長メッセージです。金融・経済情報サービスを提供するQUICKが発表した「投資家における統合報告書への期待」に関する調査結果でも、投資家が最も注目し、期待しているコンテンツはトップメッセージであることが示されています。

 では、なぜ今、投資家たちは社長メッセージに注目し、期待しているのでしょうか。それは、投資をする際の判断材料として、社長メッセージの重要性が高まってきているからです。

 もちろん今までも社長メッセージは重要なコンテンツではありましたが、以前の資本市場では、過去の財務状況からテクニカル分析をベースに投機をしたり、中期的にファンダメンタルズ(売上高や利益といった業績や資産、負債などの基礎的な財務状況)から予測したりすることが重視されてきました。

 しかし事業環境の変化が激しさを増す現在は、数字だけで企業の長期的な未来を見通すことが難しい状況です。そのため、長期の成長可能性を見極める材料として、企業の価値観やビジョン、カルチャーが重要であり、これらが凝縮されている社長メッセージを重視する投資家が増えているのです。

 投資家は「経営者はどんな経験をしてきた人なのか」「何を大切にしているのか」「この経営者が率いる会社なら、こういう未来をつくれるのではないか」などを経営者の言葉やその内容から推測し、投資判断をしていきます。