親会社NTTに左右されるドコモ歴代社長人事の舞台裏《初の転職組・前田新社長が就任》

AI要約

NTTドコモが新社長に前田義晃副社長を選出。前田氏はリクルート出身の転職組で、グループ生え抜きではない初の社長となった。通信大手の歴代社長は全員NTTグループ出身者だったが、前田氏の抜擢で新たな風が吹き始めるかもしれない。

ドコモは設立以来、NTTからの社長が続いてきたが、6代目社長の前はプロパー出身者の吉澤和弘氏が就任。新社長の前田氏と同様、吉澤氏も異例の経歴を持つ人物で、若々しいリーダーシップで期待が高まる。

NTTドコモは国内市場でトップを独走し、各種サービスの提供も拡大中。前田氏率いるスマートライフ事業は好調で、通信業界においても注目される存在となっている。

親会社NTTに左右されるドコモ歴代社長人事の舞台裏《初の転職組・前田新社長が就任》

6月14日、NTTドコモの前田義晃副社長が新社長へと昇格した。前田氏はリクルート出身の転職組で、グループ生え抜きではない社長はドコモ初だ。では、ドコモの歴代社長の系譜はどのようなものなのか。

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 通信大手のNTTドコモ(井伊基之社長)が2024年5月10日、前田義晃・副社長が新社長に昇格する人事を発表し、6月14日に正式に就任した。2020年12月から社長を務めていた、親会社NTT(島田明CEO)出身の井伊氏は相談役に退く。

 新社長の前田氏は、非通信分野であるスマートライフカンパニー(コンテンツ・コマースサービス、金融・決済サービスなど)を統括していた。さらにリクルート(出木場久征社長兼CEO)出身の転職組で、グループ生え抜きではない社長はドコモ初だ。

 これまで、ドコモの社長職は、長らくNTTグループ出身者の指定席だった。

「それゆえ、『Japanese Traditional Company』を略して『JTC』と言われ、古くて変われない会社だと揶揄されてきた」(経済ジャーナリスト)

 そのためメディアでは、“サプライズ人事だ”と騒がれた。当の前田氏は5月の会見でこう語った。

「通信分野とは違い、色んな領域のビジネスに取り組んできた。『当事者意識を持つ』『チャレンジをする』『リスペクトをする』。この三つを自分は大事にしている」

 前田氏の抜擢で「ザ・JTC」は、生まれ変われるのか――。

 1992年7月1日、NTTの移動通信部門が分社化した、NTT移動通信網(現・NTTドコモ)が営業を開始。1999年には、世界初の携帯電話でのインターネット接続サービス「iモード」を発表した。これが爆発的ヒットとなり、市場での価値は一気に高まった。2013年から現在の商号となる。国内の携帯電話契約数は約8990万で、国内市場における市場占有率は約42%。ともに1位を誇っている(2024年3月発表)。

「営業収益は約6兆1千億円。2024年3月期決算では、営業収益、営業利益、純利益とも過去最高。携帯電話事業を含むコンシューマー通信の営業利益はほぼ横ばい。前田氏が率いるスマートライフ事業は、金融決済とマーケティングソリューションが好調で、増収・営業増益となりました」(通信担当記者)

 ドコモは初代の大星公二氏、2代目の立川敬二氏がともに6年、社長を務めた。その後、中村維夫氏(3代目)、山田隆持氏(4代目)、加藤薫氏(5代目)と4年周期で社長が交替してきた。全員とも親会社のNTTから送り込まれてきた人材だ。

 ドコモの立ち上げから関わった実質的なプロパーから社長となったのが、6代目の吉澤和弘氏である。

 吉澤氏は岩手大学工学部情報工学科で電気システム工学を学んだ後、NTTに入社。ドコモの設立前年から準備室に配属され、1992年の設立とともに移籍した。人材育成部担当部長や経営企画部担当部長などを経て、2011年に取締役に。2014年から副社長を務めていた。

「前任の加藤さんとは携帯電話の黎明期にショルダーホンを一緒に担当した仲。社長就任会見で、加藤さんは吉澤さんを『非常に実直・誠実な、青年を思わせるところがあるぐらい若々しい人』と褒めていた」(ドコモ関係者)