支持率ともに低迷の日韓首脳 韓国は対日外交が再び政権の攻撃材料となる懸念

AI要約

岸田文雄首相と尹錫悦大統領の直接会談は、日韓関係改善を強調し、戦略的連携を再確認

両首脳の信頼関係は強化されつつも、低支持率が不安要素となる可能性

日韓の諸懸案には精査が必要、韓国側も関係重視の姿勢を示す

岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の今年初めての直接会談は、両国関係を改善させてきた2人の信頼関係の強さをうかがわせた。北朝鮮や台湾海峡を巡る情勢が緊迫化する中、両首脳は今後も、日韓の戦略的な連携を強めていく考えだ。ただ、首相と尹氏が共に低支持率にあえいでいることは今後の不安要素ともなっており、日韓の諸懸案の行方にも影響を及ぼしそうだ。

■緊密連携を再確認

「日韓関係をさらに飛躍させるために尹大統領と私が指示を出して準備を進めていきたい」

首相は会談の冒頭、来年の日韓国交正常化60周年に関してこう述べた。尹氏も「首相と私が心を合わせて準備に取り組む」と応じ、首相との連携を強調した。

日韓関係改善の流れを受け、日米韓3カ国は昨年8月、国際会議の場ではない単独の首脳会談を初めて米ワシントン郊外で開催し、安全保障協力を確認。今回の会談の主眼も、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や台湾への軍事的圧力を強める中国を念頭に、日韓、日米韓の緊密な連携を再確認することにあった。

一方で日韓間には、いわゆる徴用工訴訟問題や日韓合意の履行など未解決の課題がある。ただ、日本外務省幹部は「ひとつの問題にフォーカスすることで、関係が逆向きに進んでいってしまうことがあってはならない」と話す。こうした配慮からか、首相が会談で具体的にどの懸案に言及したかについて、外務省は「相手方との信頼関係もあり、具体的に述べることは差し控える」とした。

韓国側も両国関係を重視する姿勢は一貫する。今回の会談で、韓国国内では通信アプリ「LINE(ライン)」を運営するLINEヤフーに不当な行政指導を行ったとして、日本の総務省に抗議するよう促す声が高まっていた。それでも、尹氏は国内の反発が予想される中でも「外交問題と認識していない」と日本側に言明。与党が惨敗した4月の総選挙結果は、日韓協調に取り組む外交政策に影響しないとの立場を鮮明にした。

■尹政権の環境変化