日本人男児殺害、社会の不安定化の表れ 中国は説明責任果たせ 東京大教授・阿古智子氏

AI要約

日本人男子児童が深センで刃物で刺されて死亡。中国政府が説明責任を果たすべき。

容疑者の動機には反日感情が関係している可能性。外国人への犯罪が増加し、社会の不安定化が進行。

日中関係にも影響する悲劇。中国側は原因を考え、ナショナリズムの横行を防ぐべき。

日本人男児殺害、社会の不安定化の表れ 中国は説明責任果たせ 東京大教授・阿古智子氏

中国広東省深圳(しんせん)市で日本人学校に通う男子児童(10)が男に刃物で刺されて死亡した事件について、現代中国を研究する東京大の阿古智子教授に背景を聞いた。

6月に江蘇省蘇州市で起きた日本人母子への切り付け事件の徹底調査がなされない中、また悲劇が起きてしまった。殺害されたのは罪のない日本人の男の子だ。尊い命が奪われた現実に憤りと悲しみを抑えられない。都合の悪い事実を隠したがる中国政府も、今回はさすがに説明責任を果たさなければならない。

容疑者の動機には「反日」「抗日」が関係している可能性も捨てきれない。事件が起きた「9月18日」は満州事変の発端となった柳条湖事件の日だ。「この日なら許される」などの感情が働いたかもしれない。中国側は背景を徹底調査し、適切に報告すべきだ。

この事件も含め、中国の政府系メディアは詳細を報じないが、中国では最近、外国人への犯罪が増加している。また交流サイト(SNS)を見ると、中国人同士の殺傷事件も頻繁に起きていることがわかる。社会が極めて不安定化している表れではないか。

中国は経済が悪化し続けており、習近平政権を批判的に見る人も増えている。だが、言論統制で不満を口に出すことができず、暴力で解決する傾向が強まっていると感じる。思想教育やプロパガンダ(政治宣伝)が行われる中、余裕のない人が「敵」と教わった日本人を不満のはけ口としてみている恐れもある。

今回の悲劇は日中関係にも影響するだろう。中国事業により慎重になる日本企業も増えるかもしれない。中国が徹底調査して説明責任を果たすのが関係維持への第一歩だが、それだけでは根本的な解決にはならない。

日本への憎しみを生むような教育をしていなかったか。中国側はこれを機に考えるべきだ。日本人も事件があったからといって中国人差別に手を染めてはいけないが、中国が行き過ぎたナショナリズムの横行を直視しなければ、再び悲劇が起きかねない。(聞き手 桑村朋)