中国・深圳の日本人男児殺害 在留邦人、相次ぐ外国人襲撃に衝撃 景気悪化で社会不安懸念

AI要約

中国広東省深セン市で日本人学校への登校中に男に刺された10歳の日本人男児が死亡。中国全土の日本人に衝撃を与えている。深センや他の都市での不安が広がっている。

外国人襲撃が相次ぎ、中国政府は動機などを明らかにしておらず、日本人コミュニティは不安を感じている。中国のSNSでは反日感情をあおる動画や投稿も目立つ。

中国政府の対応や経済状況、日中関係にも影響が出ており、日本企業の中国への投資意欲が低下している。中国政府は問題の深刻さを認識し、対応を迫られている。

中国・深圳の日本人男児殺害 在留邦人、相次ぐ外国人襲撃に衝撃 景気悪化で社会不安懸念

【北京=三塚聖平】中国広東省深圳(しんせん)市で日本人学校への登校中に男に刺された小学生の日本人男児(10)が19日に死亡したことは中国全土で生活する日本人に衝撃を与えた。中国政府は動機を明らかにしておらず、中国各地の邦人社会には不安が広がっている。

■情報なく対策とれず

「残念でたまらない」

深圳にも拠点を持つ日本企業トップは男児襲撃事件に悲しみと憤りを隠さなかった。特に子供連れで中国に駐在している社員の間では深圳に限らず不安が広がっているという。

中国では6月に江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバスを待っていた日本人の母子が刃物で切り付けられる事件が起きたばかり。短期間で相次ぎ日本人の子供が襲われる事件が起きたことへの動揺は計り知れない。深圳は香港にも近い経済都市で、外国人と距離が近い街と思われていたことも衝撃に拍車をかけた。

中国政府が動機などについて詳細を説明していことは、在留邦人の不安感をいっそう増大させてもいる。中国の主要メディアの報道はごく一部にとどまり、深圳の事件を知る中国人は多くない。子供を北京の日本人学校に通わせる男性は「情報がないため対策を取りにくい」と語った。

■相次ぐ外国人襲撃

中国では外国人が襲われる事件が立て続けに起きている。6月には蘇州の事件に加え、吉林省吉林市で米コーネル・カレッジから同市の大学に派遣されている教員4人が刃物で刺され負傷する事件も起きた。中国政府は「偶発的な事件」と強調するばかりで、詳しい説明は避け続けた。蘇州の事件では、日本人母子に刃物で切り付けた中国人の男を阻止しようとして刺されて死亡した中国人女性を英雄として持ち上げて「美談」にしたが、効果的な対策を取ることはなかった。

■SNSに疑念あおる動画も

中国では不動産不況を背景に経済成長が鈍化して庶民の雇用・所得環境が悪化しており、社会不安が懸念されている。そうした中、外国人に不満のはけ口が向かいやすいムードがある。特に18日は満州事変の発端となった昭和6(1931)年の柳条湖事件から93年にあたり、中国国営メディアは「抗日」の歴史を繰り返し強調した。中国の交流サイト(SNS)では「日本を打倒せよ!」などと反日感情をあらわにした投稿も目立った。

SNSでは深圳の事件について「これこそが国の恥だ」などと容疑者を批判する投稿も少なくない。一方で、中国各地にある日本人学校について「なぜ各地に日本人学校があるのか。背景にはどんな秘密を隠しているのか」と疑念をあおるような動画も残る。中国では当局がSNSを管理しており、こうした動画を野放しにしている形だ。

中国政府は現在、不景気の中で海外からの投資呼び込みに熱心だ。日中外交筋は「こんな状況では投資などできないと日本企業が考えるのは当然だ。中国政府は日中関係の根幹に関わる問題と受け止めて対応する必要がある」と指摘する。