フランス人もワイン離れ?産地ボルドーに影響、不可逆的なブドウの木引き抜き計画も

AI要約

1960年から2020年までのワイン消費量の急激な減少や、赤ワインの需要低下によるボルドーのワイン産業への影響について

需要の変化に対応するためにブドウの木の引き抜き計画が実施されており、自発的に引き抜く動きもある

委員会は新たなワイン産地の魅力を打ち出すため、環境に配慮した取り組みを行っている

フランス人もワイン離れ?産地ボルドーに影響、不可逆的なブドウの木引き抜き計画も

なだらかな丘陵地にブドウ畑が広がるフランス南西部のボルドー。ワインづくりはローマ時代から始まったとされ、豊かで深い味わいは「ワインの女王」とも称される。だが今、その世界屈指の産地も大きな変革を迫られている。

「1960年、フランス人1人当たりの年間のワイン消費量は120リットル超。それが2020年には40リットルだ」

生産者とワイン商らでつくる「ボルドーワイン委員会」のアラン・シシェル会長(62)は話す。

家族で食卓を囲む習慣が廃れ、食事もお酒も多様化するなど多くの要因があるにせよ、「これほどまでフランス人がワインを飲まなくなった時代はない」。

特に近年は、ボルドー産ワインの8割を占める赤が苦戦している。「重厚でアルコール度数の高い赤より、度数の低いロゼや白、スパークリングを求める消費者が増えた」。肉を食べる機会が減ったことが影響しているとの指摘もある。

輸出では、最大の市場である中国向けが景気後退などで伸び悩み、2023年の輸出量は前年比17%減。コロナ禍で大きく落ち込んだ2020年の水準よりも低くなった。不況の影響を受けない高級ワインも一部あるが、在庫を抱えることでさらに価格が下がるという悪循環に陥ったという。

需給ギャップ解消のため、昨年から進めているのがブドウの木の引き抜き計画だ。

ボルドーを含むジロンド県の9500ヘクタール(東京ドーム2000個分)を余剰分と算定し、政府と委員会が1ヘクタール当たり6000ユーロ(約100万円)の補助金を出す条件で希望者を募集した。1200件の応募があり、今秋までに順次引き抜く予定という。

補助金を受け取った場合、再びブドウを植えることはできないといい、シシェル会長は「何世代も続いたワインづくりをやめてしまう人もかなりいる。風景も変わってしまうので、跡地の利用も大きな課題だ」と話す。

一方、補助金を受け取らずに自発的にブドウを引き抜き、新たなワインづくりに挑戦しようとする動きもあるという。

引き抜き計画はオーストラリアや米カリフォルニアなどの産地でも進められており、世界的な問題になっている。

ボルドーの委員会は目の前の需給ギャップを解消するだけでは不十分とみて、産地として新たな魅力を打ち出そうとしている。

一つは環境に配慮した取り組みだといい、シシェル会長はボトルを取り出した。ボルドーワインの従来型のボトルは、いかり肩が特徴だったが、新型はなで肩。持つと軽さが実感できる。「より少ないガラスで製造でき、輸送コストも負荷も抑えられる」という。