4~6月期 海外企業の中国離れが顕著に 対中直接投資が2.2兆円の記録的流出

AI要約

中国への外国からの直接投資が急速に減少しており、海外資金が中国国外に流出する傾向にある。これは景気減速や地政学的緊張の影響を受けた結果であり、多国籍企業が中国を離れる動きが加速している。

中国政府は国内消費の低迷や対外投資の増加に悩まされており、外資の撤退や資本の引き上げが増えている。西側企業はリスク回避のため、生産拠点を中国以外の国に移す動きも見られる。

中国の貿易黒字は増加しており、しかし米国との間で数字のギャップが問題視されている。中国経済に対する懸念が高まる中、投資家や企業が中国市場への不安を抱えている。

4~6月期 海外企業の中国離れが顕著に 対中直接投資が2.2兆円の記録的流出

外資の脱中国が急加速している。中国国家外為管理局(SAFE)が9日発表した今年第2四半期(4~6月)の国際収支によると、中国への海外からの直接投資が記録的規模で資金を引き揚げていることが分かった。米ブルームバーグニュースは、「中国経済をめぐる強い悲観論を反映か」とし、英紙テレグラフは「習近平政権へ大打撃」と伝えた。

SAFEのデータによると、中国の国際収支における対中直接投資が4~6月期に150億ドル(約2兆2000億円)近くの流出過多となった。また、上半期(1~6月)の純流出は約50億ドル(約7359億円)だった。この減少が今年いっぱい続けば、比較可能なデータがある1990年以降で初めての純流出となる。

ブルームバーグによると、中国への海外からの直接投資は2021年に過去最高の3440億ドル(約50兆円)を記録して以降、減少。景気減速と地政学的緊張の高まりにより、一部の企業は投資を削減し、中国における電気自動車(EV)への急速なシフトに外資系自動車メーカーは戸惑い、一部は投資の撤退や縮小を余儀なくされたとしている。

また、テレグラフ紙は、第2四半期の海外投資の大規模引き揚げが、中国経済への懸念を理由にサウジ主導の石油輸出国機構(OPEC)が原油需要の伸び予測を引き下げた直後のことだと指摘。

資産売却と利益の海外移転を競う中、景気減速と地政学的緊張の高まりに加え、人民元の下落や低金利が市場にとって大きな阻害要因になっていると経済専門家は分析する。

中国への海外直接投資が前回マイナスに転じたのは2023年秋で、120億ドル(約1兆7657億円)が流出した。

パンテオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、ダンカン・リグレー氏は同紙に、「海外投資家が資産を売却して中国から撤退するか、利益を中国から引き上げているのが現状」と述べた。

また、米国に輸出している西側企業はサプライチェーンのリスクを減らすため、ベトナムやメキシコなどの友好国に生産拠点を「ニアショアリング」していると述べた。ニアショアリングとは、企業が本拠地や最終消費地から地理的に近い国や地域に事業を移転したり、アウトソーシングしたりすること。リグレー氏は「輸出工場を持つ企業は米国との地政学的緊張を懸念している」と付け加えた。

同氏はまた、中国の国内消費者需要がコロナ禍後の再開以来、不動産危機で国民の富が損なわれ、信頼が損なわれたため低迷しているとし、「消費者は一般的に、より安いものを購入することで購入品をグレードダウンしている。観光など一部の分野では支出の回復が限定的であり、以前ほど大きなものを購入する意欲がない」と説明した。

そんな中、SAFEのデータは、外国企業の利益の傾向や中国での事業規模の変化も反映している。先進国が金利を引き上げる一方、中国は景気刺激策として金利を引き下げているため、多国籍企業は中国より海外に現金を保有する場合が多い。

中国商務省の以前の数字によると、2024年上半期の中国への新規外国直接投資は、2020年のパンデミック開始以来最低だった。

一方、中国の対外投資は今年4月~6月期に過去最高となる710億ドル(約10兆4470億円)を記録し、前年同期比で約80%増えた。中国企業は海外投資を急速に増やしており、EVや電池工場などのプロジェクトに資金を投入している。データはまた、中国の貿易黒字の測定における異常が拡大し続けていることを示し、第2四半期には過去最高の870 億ドル(約12兆7940億円)を記録し、今年上半期では約1500億ドル(約22兆円)に達したとしている。

だが米財務省によると、中国の税関データが示す貿易黒字額は国際収支で報告されているよりもはるかに大きく、米国側は中国政府に不可解な数字のギャップについて説明を求めている。例えば、中国税関が公表した2023年の貿易黒字はSAFEが発表した数字より約2300億ドル(約33兆8800億円)大きかった。