甘利明氏、TPP交渉で米代表を気迫で痛撃 部下には気配り「日本一うまい大福あるぞ」  国際舞台駆けた外交官 大江博氏(19)

AI要約

外交の舞台裏で駆け引きが繰り広げられる様子が描かれる。元駐イタリア大使の大江博氏が、異色の外交官人生を振り返る。

大江氏がTPP首席交渉官代理に就任した際の経緯や米国との農産物交渉について語られる。

米国のUSTRトップからの無茶な要請に対し、大江氏が農水大臣と連携し、交渉を進める過程が明かされる。

甘利明氏、TPP交渉で米代表を気迫で痛撃 部下には気配り「日本一うまい大福あるぞ」  国際舞台駆けた外交官 大江博氏(19)

公に目にする記者会見の裏で、ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。その舞台裏が語られる機会は少ない。ピアニスト、ワイン愛好家として知られ、各国に外交官として赴任した大江博・元駐イタリア大使に異色の外交官人生を振り返ってもらった。

■変則的な布陣

《2013年、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首席交渉官代理に就任した》

当初は、首席交渉官の鶴岡公ニ氏を全般的に補佐する予定でしたが、さまざまな経緯を経て、日米を中心とする農産物交渉を担当することになりました。

米側の相手は、ベッター農業担当首席交渉官とカトラー通商代表部(USTR)次席代表代行です。ベッター氏は上院承認が必要なポストで、カトラー氏とともに、首席交渉官のワイゼル氏よりランクが上という変則的な布陣でした。米側が日米農産物交渉をいかに重視していたかの証左だと思います。

カトラー、ワイゼル両氏は私が1990年代、駐米日本大使館に勤務していたころのカウンターパートで、当時からの信頼関係は交渉に大きく役立ちました。

■「ワシントンに残れ」と無茶な依頼

《米首都ワシントンで農水省の代表者と対米交渉を終えた後、ホテルに戻ると、カトラー氏からメールが届いていた》

「明日の朝、1人でUSTRに来てほしい」との内容でした。訪れてみると、USTRトップのフロマン代表が私に会いたいとのこと。

フロマン氏の執務室に行くと突然、「日米農産物交渉は、お前と全部進めたい。交渉がまとまるまでずっと、ワシントンに残れ」と無茶なことを言うのです。私は「それは無理だ。関係者と相談させてくれ」と言い、帰国しました。

林芳正農水大臣に経緯を説明した上で、「1人では交渉できない。大臣が1番信頼できる人を私の補佐に付けてください」とお願いし、大澤誠農水省国際部長との2人3脚の交渉が始まったわけです。

私は農水省に対し、「私は農産物の専門家ではない。農水省が無理だということを相手に絶対、提案しない。ただし、私は〝交渉のプロ〟という自覚はある。交渉はカードを出すタイミング次第で傷を小さくできるし、タイミングを間違えば大きな出血もする。私の意見を聞くか否かはあなたたち次第です」と伝えました。

■「勝負勘」を信じる