先代会長も想像できないことが起きた…孫の鄭義宣現代自動車会長に迫る課題(2)

AI要約

報賞体系や組織文化に関する問題について、現代自動車と世界的IT企業の差異が指摘されている。

現代自動車の報賞体系は労使合意により全社員に一括適用されるため、個人の成果に基づく報酬を希望する世界的人材を惹きつけるのが難しい状況だ。

鄭会長は現代自動車が今後も成長するためには、組織文化や人材獲得の観点で変革が必要であると語っている。

問題は報賞と組織文化だ。世界的IT企業の報賞体系と現代自動車の溝は大きい。現代自動車の立場では払うお金がないのではなく、労使合意により全社員に一括適用する現代自動車の報賞体系を変えるのが困難なためだ。こうした給与体系は全社員の平均年俸を高める効果はあるが、個人の成果に基づき確実な報賞を望む世界的人材を迎え入れるには障害だ。現代自動車の元人事担当者は「IT人材は多額の成果給を望むが現代自動車の報賞体系は平等主義的なため海外の修士・博士出身IT人材は現代自動車を選ばない」と話す。

機械工学専門家中心の組織文化もIT分野の人材を迎え入れるのに障害に選ばれる。鄭会長は「私たちはIT企業よりもっとIT企業らしい所にならなければならない」と話してきた。しかし現代自動車ではエンジン車専門人材のパワーが依然として強大だ。「機械工学vs電子工学」に象徴される社内の新旧勢力対立がある点も同社関係者らは否定しない。

◇48倍成長した現代自動車「すでにファーストムーバー」

鄭会長がいつも学ぼうとしている彼の祖父に当たる鄭周永(チョン・ジュヨン)先代会長は「力のある人に見誤られれば苦しい目に遭う」(1988年「第5共和国聴聞会」)と話した。政治権力の介入が露骨だった時期に企業家の苦しさを打ち明けたのだ。別の見方をすれば当時は企業が顔色をうかがうのは韓国政府が唯一だった時でもある。その当時現代自動車の売り上げは3兆4111億ウォンだったが昨年には162兆6636億ウォン(現代自動車グループは432兆1839億ウォン)で35年間に約48倍成長した。

祖父の時代の現代自動車が国内企業だとすれば鄭義宣会長の舞台はすでに韓国を抜け出して久しい。米中貿易対立とロシアのウクライナ侵攻後の世界で現代自動車グループは地政学的リスクにもっと機敏に対応しなければならない。中国の電気自動車攻勢も現代自動車グループを圧迫している。最近発生した電気自動車火災事故と関連しては韓国政府だけでなく米国と欧州連合(EU)の規制動向が現代自動車・起亜の電気自動車転換スケジュールに重要な変数になっている。

強硬な労組も韓国事業所だけの問題ではない。米ジョージア州に電気自動車生産工場を準備中である現代自動車に対応し全米自動車労組(UAW)は現代自動車工場労働者に向けた専用ホームページまで作り組合員を募集している。UAWが新たな組合員を引き込むのに掲げたスローガンは「現代自動車労働者よ、立ち上がれ」だ。彼らは「外国の会社が入ってきて米国人が出した税金で支援まで受けたのに、われわれは雇用不安と低賃金に苦しめられている」と主張する。米国メディアによると、アラバマ州など現代自動車工場の労組加入率は30%に達する。

鄭会長と近い財界関係者は彼が経営上の悩みのカギを祖父である鄭周永先代会長から見いだすと話す。彼は2022年の高麗(コリョ)大学卒業式の祝辞で「事業初期に火災で全財産を失い戦争まで体験しながらも結局企業を起こした鄭周永会長は『どんな失敗よりも致命的な失敗は挑戦をあきらめること』と強調した」と紹介した。社会進出を控えた彼らに伝えた話であり本人に向けた誓いだった。鄭会長の諮問グループの1人である延世(ヨンセ)大学経営学部のイ・ムウォン教授は「これまでファーストフォロワーとして成長を遂げてきた現代自動車グループは、未来事業、人事、労務など多くの分野ですでにファーストムーバーになった状態。現代自動車が突き進む道が業界のルールになるようにしようとするのが彼の努力」と指摘した。