【落語界の新たな動き】落語協会の新会長に柳家さん喬、立川流も社団法人を設立し代表に志の輔、副代表に談春・志らくが就任
落語界に新しい会長が誕生したことを紹介するエッセイ。漫才協会の塙会長と落語協会の市馬会長について述べられている。
市馬会長は人柄がよく、落語の楽しさを表現することが得意であり、柳亭小さんのもとで修行したエピソードが紹介される。
また、さん喬会長は古典の名手であり、歴代の落語協会会長を振り返り、小さん一門の流れを示唆している。
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、落語界に誕生した2人の新会長について綴る。
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連日深夜に、ついつい五輪を見てしまうのでこうして昼間はなんだかボンヤリ。原稿を書こうにもまとまらないし挙動不審。暑さもあっていきなりのレディ・ガガ! あっ調子が出てきました。コマネチの姿もありました。北野氏何故に“Wコマネチ”をやりに行かなかったのか。北野氏、フランスでは超有名なんでしょ。とにかく明るい安村くらいはウケたかも。
五輪でも何でも人が集まりゃ「会長」というものを選ばなければならない。猿山のボスだ。私が“外部理事”をつとめる「漫才協会」の若き会長はナイツの塙だ。見かけによらずよく仕事をしている。漫協の唯一の赤字は塙が個人的にやっているユーチューブらしい。
そんな中「落語協会」の会長を10年つとめ、この度一門の先輩でもある柳家さん喬にスムースにバトンタッチしたのは柳亭市馬。人柄がよく、ついクスクスッと笑ってしまう落語本来の楽しさを味わわせてくれる。
市馬が雑誌に一句詠んでいた。「ほどの良い風が柳を引きたゝせ」。達者なものだ。人間国宝・柳家小さんのところへ剣道ができるからと入門。「おい稽古だ」と言われると浴衣に着換え扇子を持った。「バカ野郎、落語じゃねぇ。剣道だ」。アハハそういう弟子である。
また歌謡曲がとびっきり良く(三橋・春日)、噺家のパーティなどでは歌謡浪曲長編、三波春夫の『俵星玄蕃』を披露するや、ヤンヤの大喝采。
新会長のさん喬は1948年生まれ私と同い年。古典の名手である。あまり落語を知らない人にも、最近の会長代々を。
【4代】古今亭志ん生(NHK『いだてん』でたけし氏が演じた)
【5代】桂文楽(まさに名人の名にふさわしい)
【6代】三遊亭圓生(レパートリーの広さ)
【7代】柳家小さん(人間国宝・談志の師匠)
【8代】三遊亭圓歌(新作爆笑王)
【9代】鈴々舎馬風(昔は“かゑる”と言ってリングアナまでやった)
【10代】柳家小三治(このあたりはまだ覚えているでしょう。人間国宝)
【11代】柳亭市馬
【12代】柳家さん喬。
見れば一目瞭然、小さん会長以下圓歌をのぞけば、すべて小さん一門なのである。だから何だという訳でもないが……。
ここを離れた「落語立川流」からニュースである。私のそばにいる立川志ららが1年位前からやたら書類持って走りまわったりハンコついたりしてるから何だろうと思ったら「一般社団法人 落語立川流」設立だと。代表に志の輔、副代表に談春、志らく。磐石の体制となった。さぁどうなる立川流。
※週刊ポスト2024年8月16・23日号