紅海から消えた日本商船、航行続ける中国船 武装組織「フーシ派」の攻撃が変えた中東航路

AI要約

イエメンのフーシ派による紅海での商船攻撃が日本の商船の航行を7ヶ月間停止させ、中国の商船は航行を続けるもののアフリカ南端を迂回している。

攻撃や乗っ取りが89件も発生しており、海上自衛隊艦船もフーシ派のミサイル攻撃を受けた事態が発生している。

日本の商船は国交省により紅海の通行が困難と判断され、喜望峰ルートへの迂回を余儀なくされ、船の航行時間が平時よりも長くなっている。

紅海から消えた日本商船、航行続ける中国船 武装組織「フーシ派」の攻撃が変えた中東航路

昨年11月以降、イエメンの親イラン民兵組織「フーシ派」が紅海で商船を狙った攻撃を続けている影響で、日本の商船は過去7ヶ月間、イエメン周辺の海域を航行していないことが12日、船舶自動識別装置(AIS)のデータから明らかになった。一方で中国の商船は、同国の船であることをアピールしながら紅海の航行を続けていることも分かった。中国を含む外国船の一部はAISを切って航行を続けているが、多くの商船はアフリカ南端の喜望峰へ迂回するルートを強いられている。中東地域の緊張によって紅海の航路は様変わりした。

■攻撃や乗っ取りが89件発生

パレスチナ自治区ガザの情勢を巡るイランとイスラエルの緊張を受け、イランを支持するフーシ派は、紅海で親イスラエルとみなす商船への攻撃を繰り返している。その皮切りとなったのは昨年11月19日、日本郵船が運航する貨物船「GALAXY LEADER」の乗っ乗っ取りで、拘束された乗組員は未だ解放されていない。

11月27日には、海賊対処にあたっていた海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」が、フーシ派による弾道ミサイル発射を受けて、イエメンの南の海域から最大速力で離脱する事態も起きた。自衛隊が拠点を置くアフリカのジブチからイエメン本土までは、紅海とアデン湾を分かつバベルマンデブ海峡を挟んで約30キロしか離れていない。

米シンクタンク「ワシントン近東政策研究所」のデータによると、11月に日本郵船の運行船が襲撃されて以降、イエメン周辺の海域では89件の攻撃や乗っ取りなどが発生している。今年3月にはミサイル攻撃を受けたベリーズ船籍の貨物船が沈没した。

■国交省「紅海は通れない状況」

AISを搭載した船舶の運航情報などを提供する「Kpler」のデータを産経新聞が分析したところ、今年2月以降、日本の商船はバベルマンデブ海峡を通航していないことが分かった。

国土交通省の国際海運の担当者は「フーシ派が攻撃を続けており、紅海は通れない状況だ。日本の船舶から、海賊対処のための入域通報も受けておらず、航行した船はないのではないか。海運各社には注意喚起している」と話す。

日本を含む西側諸国の商船の多くは、紅海を通過しない喜望峰ルートへの迂回を強いられている。国際通貨基金(IMF)の分析によると、アジアとヨーロッパを結ぶ船便にかかる日数が平均で10日間以上長くなった。日本郵船は「喜望峰を通ることで、平時に比べ長くかかるようになった」と指摘。船の種類や積荷によって航行速度が異なり、重量のある鉱石などを運ぶばら積み貨物船は3週間ほど延びる場合もあるという。