脱炭素に踊らされたドイツの「悲惨すぎる末路」…国際競争力が地に落ち、産業の空洞化も深刻、過度な中国依存が裏目に

AI要約

メルケル氏と温家宝総理の友好関係から始まり、ドイツと中国の深い経済的つながりについて述べられている。

しかし、最近では独中関係が悪化し、貿易額も減少している状況が説明されている。

さらに、EUが中国のEV車に対する関税を考える理由について詳しく説明されている。

脱炭素に踊らされたドイツの「悲惨すぎる末路」…国際競争力が地に落ち、産業の空洞化も深刻、過度な中国依存が裏目に

まだ首相になったばかりだった頃のメルケル氏は、温家宝総理に会うと目に星が出た。政治家としての温家宝を尊敬していたに違いない。元々昔からウマのあったドイツと中国は、16年のメルケル政権の間に、切っても切れない深い仲となった。

20年ほど前までの中国の輸出品は、繊維製品、小型家電、軽工業品などが圧倒的に多く、ドイツにとって商売上のライバルとはなり得なかった。当時、中国の政治家の誰かが、「あなた方が工作機械を一台売った時の利益を得るために、私たちは何万足もの靴を売らなければならないのですよ」などと言っていたのを覚えている。ただし、メルケル氏だけは、すでにその頃から中国のポテンシャルを明確に予感していたのではないか。政治的にも経済的にも、そして軍事的にも。

その中国がドイツにとっての最大の取引相手国となったのが2016年。中国ではドイツの自動車が飛ぶように売れ、一方、中国からの輸入品には猛スピードでハイテク製品が加わり始めた。当時の独中関係は蜜月時代と呼ばれ、故李克強総理は常に“ウィンウィン関係”を強調し、メルケル首相は「中国は私たちにとって、アジアで一番大切な国」と豪語した。

ただ、今では李克強氏は草葉の陰で、一方のメルケル氏は表舞台からは退場。そのせいだけではないにしろ、毎年、足繁く開催されていた2国間会議は中断され、現政権になってからはベアボック外相(緑の党)の下、独中関係はこれまでになく悪化している(後述)。

さらに疫病や不況や戦争が重なったこともあり、2023年の独中の貿易額は前年比で15.5%減。とはいえ、いまだにその額は2500億ユーロと他のどの国よりも多く、不況のドイツにとっては、もはや中国に縋るしかないというのが現状だ。

この経済的な中国依存はEUも似たようなもので、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長は、今後は中国とは距離を置くと言っている(できるかどうかは別)。ただ、実はEUが本当に阻止したいのは、昨今、ヨーロッパ進出が目覚ましい中国のEV車のこれ以上の伸張である。

EUが温暖化防止のためとして、ガソリン車とディーゼル車の駆逐を宣言してから、すでに久しい。EU各国はEV車の普及に注力し、購入の際の補助金など、さまざまな政策を実施してきた。それどころか今では、35年からはガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するという、まさに自由市場経済に逆らった荒技まで打ち出している。

しかし、EUがどんな飴と鞭を使ってもEV車は売れない。特にEU製のEVは高くて売れない。今ではたいていの政府で、補助金も尽きてしまった。だから、どうしても買わなければならないなら、当然、中国の安価なEV車が選ばれる。

そこで困ったEUが思いついた次の対策は、自分たちがもっと競争力のあるEV車を作ろうということではなく、中国のEV車へ関税をかけること。中国のEV車が安価であるのは中国政府からの不当な補助金のおかげであるから、制裁すべきという理屈だ。