「EV天国」化するオーストラリアで見えたBYDの“表と裏” 「地獄のカスタマーサービス」を明かす一家

AI要約

オーストラリアでは燃料費の高騰や補助金政策の影響でEVの売り上げが急増しており、特に中国産のEVが人気だ。

しかし、中国製EVにはカスタマーサービスの問題が指摘されており、一部のユーザーから不満の声が上がっている。

一方で、EVが普及しているオーストラリアでは屋根上太陽光発電の活用も進んでおり、環境に配慮しつつEVを導入する動きも広がっている。

「EV天国」化するオーストラリアで見えたBYDの“表と裏”  「地獄のカスタマーサービス」を明かす一家

オーストラリアでは燃料費の高騰などを理由に、EVの売り上げが伸びている。補助金などの優遇政策もあり、BYDをはじめとした中国産EVの需要は根強い。

しかし、中国産EVが普及するにつれていくつかの問題も浮かび上がっていると海外メディアは報道している──。

2022年から2024年にかけて、オーストラリア国内の月間EV販売台数は約1900台から8000台へと大幅に増加した。

普及率そのものはまだEV先進国に比べて少ないものの、屋根上太陽光発電が広く活用されているため、安価なEVが市場に出回れば瞬く間に普及するだろうと予測されている。

事実、燃料代やガソリン車の維持費が高騰し続けるオーストラリアでは、通勤のコストをEVによって節約しようとする人も多い。都心よりも郊外のほうがEVへの需要が高いとオーストラリアのオンラインメディア「ニュース・ドット・コム」は報じている。

こうした背景から、いまオーストラリアでは中国産EVが爆発的に普及している。国内で販売されるEVのじつに80%が中国製なのだ。テスラよりも安価だが機能性はほとんど変わらないことが理由だ。

そのなかでもBYDは特に人気を博しており、販売台数ではテスラを上回る。BYD人気を牽引するのは中国政府の補助金政策だ。たとえばBYDの「Atto 3」は4万4499オーストラリアドル(約420万円)。テスラの「Model 3」が5万4900オーストラリアドル(約520万円)なのを考えると、かなり手頃である。

その一方で、中国産EVへの懸念も少なからず報道されている。最初にカスタマーサービス上の問題だ。

オーストラリアのキャンベラに住むイアン・クールと妻のケイトは、BYDのファンだったが、バッテリーの不具合が起きた後に苦い経験をしたと前出の「ニュース・ドット・コム」の取材に応じて語っている。

クール一家は2022年にAtto 3モデルを注文し、同年11月に車を受け取った。彼らは「我々はBYDチームだった」と言うほどBYDの価格や性能を評価していた。

しかし、2024年3月7日。ケイトが車で通勤中にバッテリーが突然故障し、加速が効かなくなる不具合が発生した。当時、車は購入後15ヵ月ほどしか経っておらず、バッテリー残量は51%も残っていた。

なんとか無事に停車をしたものの、この一件によりクール一家はBYD、そしてEVへの不信感を募らせることになる。

事故後のBYDの対応は非常に非協力的だったとクール一家は明かす。最初は電話さえ通じず、状況を説明しても「バッテリー充電切れだったのではないか」と返されたという。

バッテリー交換や全額返金を求めると、BYDのカスタマーサービスはさらに対応を悪化させたとイアンは語る。

「BYD側の態度があまりにも気に食わなかったんです」

さらに車をBYDに預けたところ、修理中に車内のドライブレコーダー映像が消えており、事故の前日までの映像しか残っていなかったと言う。このことについて一家は問い合わせるも、明確な回答は得られなかった。

「悪意はなかったのかもしれませんが、エンジニアが誤って映像を消したにしても謝罪の言葉ぐらいはあるべきだ」とイアンは語っている。

「もしBYDが私たちを顧客として扱ってくれたのであれば、バッテリー交換だけで満足していたでしょう」

BYDはオーストラリアでの販売台数を伸ばしているが、購入後の顧客サービスの質については不安が残るようだ。