欧州のパレスチナ国家承認 足並み乱れ「象徴的なものにとどまる」

AI要約

スペイン、アイルランド、ノルウェー、スロベニアなど、欧州諸国がパレスチナを国家承認する動きが活発化

欧州の国家承認は象徴的で影響は限定的。欧州主要国の足並みが揃っていないため、イスラエルによる対抗措置への配慮も必要

欧州は米国と協力してイスラエルに圧力をかけるべきとの声もあるが、実現可能性は低いと悲観されている

欧州のパレスチナ国家承認 足並み乱れ「象徴的なものにとどまる」

 欧州では5月末、スペイン、アイルランド、ノルウェーの3カ国がパレスチナを国家承認し、6月にはスロベニアが続くなど、パレスチナ寄りの動きが目立ち始めている。

 スペインは元々、イスラエルとの関係が他国より希薄だとされる。国連総会がパレスチナを分割し、ユダヤ人とアラブ人の国をつくるとの決議案を可決した1947年、スペインはフランコ独裁政権下にあり、国連に入っていなかった。その後も、化石燃料調達のため、アラブ諸国との関係を重視。イスラエルと国交を結んだのは86年だ。現在の連立政権には急進左派政党が入っており、親パレスチナの姿勢を鮮明にしている。

 アイルランドは19世紀に英国に併合され、戦争を経て49年に独立を果たした歴史があり、イスラエルに占領されているパレスチナへの「親近感」が強いとされる。また、ユダヤ人は国内に約2500人しかおらず、英仏に比べて規模が小さい。

 ノルウェーは、ヨルダン川西岸などでパレスチナの暫定自治を認めた93年の「オスロ合意」を仲介した過去がある。ストーレ首相は5月、「平和と安全の中で二つの国家が隣り合って暮らすほかない」と語り、2国間共存へのこだわりをにじませた。

 では欧州諸国による国家承認は、パレスチナ問題の解決にどこまで影響するのか。独マールブルク大のマーティン・ベック教授は「一定の意義はあるが、象徴的なものにとどまる」と指摘する。

 要因の一つに、欧州主要国の足並みが乱れていることがある。仮に英国やフランスがパレスチナを国家承認しても、ナチス政権下でホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に関与したドイツはイスラエルに配慮し、承認しない可能性が高い。欧州全体で、平和構築に向けて関係者に圧力をかけることは困難だ。

 ベック氏は、欧州がイスラエルの同盟国である米国と連携し、イスラエルへの対応を抜本的に厳しくすべきだと主張するが、その可能性は「低い」と悲観する。【ブリュッセル岡大介】