トランプ氏はドル安を望んでいるが、政治的な不確実性がますます米ドルを強くする(海外)

AI要約

トランプ氏は米ドル安を望んでいるが、実現は困難でコストが高い

アメリカの政治的不確実性が米ドルを支える要因となっている

効果的なドル安政策の実現には多大なコストと困難が伴う

トランプ氏はドル安を望んでいるが、政治的な不確実性がますます米ドルを強くする(海外)

アメリカ大統領選で共和党候補に指名されたドナルド・トランプ氏は、アメリカの輸出を増やすためにドル安を望んでいると明言している。

経済学者やアナリストは、ドル安政策はコストがかかり、政治的に実行が難しいと指摘している。

アメリカで政治的な不確実性が続いていることが、「避難通貨」としての米ドルを支えている。

アメリカ大統領選で共和党候補に指名されたドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、アメリカの輸出競争力を高めるためにドル安を望んでいることを明確に打ち出している。

しかし、経済学者やアナリストは、ドル安にするのは難しいと警告しており、とりわけトランプ氏が2期目に勝利した場合は難しいとしている。

スイスのプライベートバンク、ロンバー・オディエ(Lombard Odier)のグローバルCIO(最高情報責任者)、マイケル・ストロベーク(Michael Strobaek)氏は、2024年7月22日のノートにこう記している。

「米ドルはさらに上昇するかもしれない。というのも、(トランプ氏が当選した場合)2025年にはさらなる減税や、『アメリカ・ファースト』の輸入関税が強化され、移民政策の厳格化により雇用市場が引き締まる可能性があると期待されているからだ」

米ドルは、7月13日のトランプ前大統領暗殺未遂事件を受けて上昇したが、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領が選挙戦からの撤退を表明した後はわずかに下落した。

米ドル指数は、通貨バスケットを構成する他の6つの主要通貨に対する米ドルの価値を示す指数で、年初来約3%上昇している。

ドイツ銀行(Deutsche Bank)のアナリストは、トランプ氏が11月の大統領選に勝利した場合、彼がどれほどドル安政策を追求したくても、政権がそれを実現するのは非常に困難になるだろうと、7月22日に公開したノートで指摘している。

効果的なドル安政策を実現するには、金融市場への介入か資本規制、あるいは「連邦準備制度理事会(FRB)の独立性の低下」のいずれかが必要になるため、アメリカだけでそれをするには非常にコストがかかるという。

ドイツ銀行のアナリストは、ドル安には2兆ドル(約312兆円)をはるかに超えるコストがかかると見積もっている。また、ドルを増やすためにアメリカが外貨準備基金を創設することは現実的ではないとも述べている。

「まず、外国資産の購入資金を調達するために追加の米国債を発行する必要がある」が、それはアメリカの国内債務上限の制約に直面し、連邦政府の財政負担になるとアナリストは指摘する。

さらに、「トランプ政権が外国資産を購入し、その過程で納税者の資金を失うという考えは、政治的に受け入れられない」という。

ドイツ銀行によると、アメリカは貿易相手国に外国為替市場への介入を支援してもらうことができるが、貿易相手国は「資金がない」可能性がある。そのような介入は、G7(主要国首脳会議のメンバー7カ国)の市場で決定される為替レートへのコミットメントにも反する。