子供も親もハッピー!「ノルウェー流子育て」の極意を英国人記者が探る

AI要約

北欧諸国の子育て方法に注目が集まっている。ノルウェーの子育てでは子供に自主性と自己決定権を重視し、自由度の高い生活を提供している。

英国人の父親がノルウェー流の子育てに驚きつつも、当たり前として受け入れている。大学で教鞭をとる彼は、ノルウェー社会に溶け込んでいる。

ノルウェーの子育ては放任主義的でありながら、国の公共サービスや社会制度と深く結びついた歴史がある。

子供も親もハッピー!「ノルウェー流子育て」の極意を英国人記者が探る

子供の幸福度がトップレベルの北欧諸国の子育ては近年、注目の的だ。それでは、どうしたら彼らのような親になれるのか。子供が生まれたばかりだという英「ガーディアン」紙の記者が、ノルウェーでその方法を探った。

午後1時30分、ニラとアリオンはいつもこの時間に学校から帰宅する。鍵を開けて家に入ると自分たちで手早く食事を作り、それが済むと宿題やピアノの練習、そして頼まれた家事をこなす。両親はあと数時間は帰ってこない。

ときには外出して、気ままに友達と遊ぶ。親から言われているルールらしいルールは、「やるべきことをすべて終えてから、テレビゲームなどのスクリーンタイムを楽しみなさい」くらいだ。

これは、ありふれた日常のように思われるかもしれない。だが2人はまだ10歳と8歳の姉弟で、大人の指示を受けない、このような半自立生活を未就学児だった数年前から続けている。

ニラとアリオンはノルウェー南西部の港湾都市スタヴァンゲルに住んでいる。6歳で小学校に通いはじめてからずっと、ほかの友達と同じく、親の付き添いなしで歩いて登下校している。

そして小学校に入学してまもなく、家の鍵をそれぞれ渡された──これが、ノルウェー流の子育て。すこぶる自由放任で、子供の自主性と自己決定権と責任に重点が置かれ、そこに外で遊ぶ楽しさを少しだけ放り込んである。

私は2人については生まれたときから知っているが(姉弟の両親とは親友だ)、子供たちに与えられている自由度の高さにはいつも驚かされる。彼らの家を訪ねるたびに、私を含む何百万もの英国人が育てられたやり方と比較せずにいられない。

1980年代の英国式子育ては抑圧的で制限的というわけではなかったが、子供の自主性に関しては、ノルウェーほどには高い価値を認めていなかった。

ニラとアリオンの父ジャンカルロ・ナポリに言わせれば、「この国ではこれが当たり前。自分たちと同じような育て方をしてない親なんて考えられない」。

英国人のジャンカルロは、旅行中にノルウェー人女性のレナと出逢った。そしてレナと結婚すると、スタヴァンゲルに移住した。近くにある大学で教える彼は、いまやノルウェー社会にすっかり溶け込み、ノルウェー流のびのび子育てクラブの忠実なる会員でもある。

このような子育ては、ほかの国の人間が北欧諸国の人々に対して抱く、よくあるイメージと一致する。高い生活水準に、手厚い出産・育児休暇、卓越した美的センス。それに国連の「世界幸福度報告」で、ノルウェーは7番目に幸福度が高く、GDP(国内総生産)は世界10位。政府系ファンドの規模は世界最大、犯罪率は世界最低を誇る。

しかし、ノルウェー流の放任主義的子育ての考え方はノルウェー人の懐よりも深く、この国の充実した公共サービスよりもはるかに長い歴史がある。