中国・浙江省衢州市、世界最大のキャビア供給地

AI要約

中国浙江省衢州市は世界最大のキャビアの産地であり、キャビアの供給量や輸出額が世界一位である。

衢州市はチョウザメ養殖に有利な天然条件を活かし、科学的な養殖モデルと地元政府の支援によりキャビア産業が急成長している。

今後同区は、養殖農家への支援強化や観光業との連携を進め、地域経済の発展を目指す方針である。

中国・浙江省衢州市、世界最大のキャビア供給地

【東方新報】最近、SNSで「中国・浙江省(Zhejiang)の衢州市(Quzhou)が世界最大のキャビアの産地」と紹介され、多くのネットユーザーが「まさか最高級食材のキャビアが身近で獲れるとは知らなかった」という話題で盛り上がった。

 しかも、かつては一粒単位で取引され「黒いゴールド」とも呼ばれたキャビアが、今では数十元(数百円~千数百円)で買えるようになっている。

 現在、中国はキャビアの世界市場の60パーセント以上を供給している。そして中国最大のキャビア生産地である浙江省衢州市は、世界のキャビア市場の総供給量の3分の1を輸出している。かつての「カスピ海の黒真珠」は、なぜ衢州の「特産品」になったのだろうか?

 キャビア、フォアグラ、トリュフは「西洋料理の三大食材」と言われている。しかし、今やネットショッピングのサイトで「キャビア」を検索すれば、同じミシュランモデルの小箱が数十元で買える時代となり、その大部分が衢州産のキャビアだ。

 10年前、浙江省が「山海合作プロジェクト」をスタートさせた。これは省内の貧困地域の経済発展を促すための政策で、「山」とは主に省西南部の山間地と舟山群島(Zhoushan island)の経済発展が不十分な地域を指し、「海」とは経済が発展した沿海部や県などを指している。山と海とを連携させて企業が主体となり市場メカニズムでウィンウィン発展を目指すプロジェクトだ。

 このプロジェクトの一環で衢州市柯城区(Kecheng)は「杭州千島湖鱘竜科技(Hangzhou Qiandaohu Xunlong Keji)」社を誘致し、省レベルの「チョウザメ主導産業園区」を立ち上げ、自然保護区から流れ出る烏渓江(Wuxijiang)上流の二つの大中型貯水池の優良な水質を利用して、100ムー(約6万6670平方メートル)の「チョウザメ流水養殖基地」を建設した。

 そして今では「生態網箱養殖+陸上養殖」(幼魚を網の囲いの中でプランクトンや魚ととも自然な環境で丈夫な体に育て、成魚を陸上の水槽で水温管理や病気予防を行い、安全に成長を促す科学的な養殖モデル)により、アジア最大のチョウザメ養殖基地に発展した。

 ここで採用されている「生態環境汚物回収網箱モデル」は、現在中国全土の「大水面生態漁業」の学習モデルとなっている。

 また今年6月末、「中国農業農村部」が同区に中国初の「チョウザメ遺伝子育種重点実験室」を発足させた。

 現在、衢州で生産されたキャビアは42の国と地域に輸出され、輸出量は9年連続で世界第一位であり、2023年の輸出額は1億8600万元(約39億228万円)に達した。

 衢州のキャビアは、その品質の高さから、ルフトハンザ航空(Lufthansa Air)、キャセイパシフィック航空(Cathay Pacific Air)、シンガポール航空(Singapore Air)のファーストクラスに採用され、またアカデミー賞の晩餐会にも使われた。

 キャビアが高価な理由は、その飼育の難しさ、加工の必要性と高い人件費と大きな関係がある。チョウザメは古代の希少生物で、水温条件が極めて厳しく、亜冷水魚に属し、最適な生育温度は摂氏18~23度だ。

 一箱のキャビアを作るには、まず汚染のない環境で6年以上養殖した成熟したチョウザメを選び、水深約40メートルの冷水環境で約1か月間飼育する。こうしないと、最も良い状態の卵の粒子にならない。キャビアの加工は16のプロセスを15分以内に完了し、48時間以内に世界中に出荷する必要がある。

 衢州はチョウザメの養殖に有利な天然の条件が備わっている。衢州は銭塘江(Qiantangjiang)の上流にあり、冷水資源に恵まれている。この地域の水温は夏でも摂氏22度が保たれ、チョウザメの養殖に非常に適している。また衢州は、浙江省、福建省(Fujian)、江西省(Jiangxi)、安徽省(Anhui)の4省の物流の要衝の地で、キャビアの迅速な輸送を可能にしている。

 しかし、もちろん地の利に頼るだけで事業を大きくすることはできない。企業の科学的な養殖モデルと地元政府の様々な支援策があってここまで発展したものだ。地元政府は「チョウザメ生態養殖制御システム」「純酸素生態処理」、「冷水浄化システム」「紫外線殺菌装置」などのデジタル設備に注力し、全国で最もデジタル管理が進んだ養殖地となっている。現在4件の発明特許を含む19件の特許を有している。

 今後同区は、チョウザメ産業の有力企業との連携を進め、養殖農家のインセンティブを強化し、現地農民の所得のさらなる成長を目指す。また景勝地が豊富な現地の自然環境とチョウザメ産業とを融合させた農村レジャーや観光業にも力を入れる方針だ。(c)東方新報/AFPBB News

※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。