【土用の丑の日がなくなる?】ニホンウナギは絶滅危惧種に、ウナギを完全養殖にする前にすべきこと

AI要約

ウナギの生産量が減少し、価格高騰が続いている。しかし、最近は完全養殖技術の向上により価格が下がりつつある。

ウナギの供給量は輸入品が急増し、価格が下がる一方で、欧州のウナギが絶滅危惧種に指定されるなどの問題が浮き彫りになっている。

中国で加工されたウナギ製品の輸入量が大きく影響しており、これが生産量の減少や価格の変動につながっている。

【土用の丑の日がなくなる?】ニホンウナギは絶滅危惧種に、ウナギを完全養殖にする前にすべきこと

 毎年の夏・土用の丑の日が近くなると、ウナギの話題が出てきます。日本のウナギ・二ホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)が2014年より絶滅危惧種(IB類)に指定しています。同じカテゴリーに分類されているのが鳥でいうと「トキ」です。それだけ資源が激減してしまったため、価格の高騰が続いています。

 今年(2024年)は「完全養殖」の技術向上で、生産効率が高まっていると報道されています。16年に1尾4万円だったシラスウナギ(ウナギの幼魚)の価格が、1821円まで低下したそうです。天然シラスウナギの取引価格の1尾500~600円程度に比べるとまだ高いものの、水産庁は1尾1000円以下のコスト実現を目指しています。

 魚の養殖には完全養殖と畜養があります。前者は人工ふ化から育てた成魚が産卵し、卵からふ化させた魚を生け簀や水槽で育てる養殖です。クロマグロやウナギの完全養殖は大きな話題になりました。

 一方、畜養は天然の稚魚や、やせた魚に餌を与えて育てる養殖です。クロマグロやカンパチなどに代表されます。クロマグロとウナギは、完全養殖(マイナー)と畜養の両方があります。

 下のグラフはウナギの供給量推移を表しています。青の棒グラフが日本の生産量で、赤が輸入した数量です。

 ウナギはもともと、特別なお祝いや人生の記念になる「ハレの日」の食べ物で高級品でした。それが、赤のグラフの推移でわかる通り、輸入品が急増して価格が大幅に下がり、スーパーなどで庶民の手に入りやすい価格になっていきました。

 価格が下がること自体はよいことなのですが、問題はその背後に起きていることです。安いウナギは、主に欧州で漁獲されたシラスウナギが中国に輸入され養殖されたものでした。安い人件費と豊富な供給量で、日本人の指導によりかば焼きにまで加工されて、大量に日本に輸出されていました。

 供給量減少の兆しは、欧州のウナギが07年にワシントン条約の付属書に掲載され、09年から貿易取引の制限対象となった頃から顕著になってきました。ヨーロッパウナギも絶滅危惧種(IA類)です。

 2000年には約16万トンも供給されましたが、近年ではその3分の1の5万トン程度で推移しています。その内、かば焼き製品については、2000年には中国から6万トン輸入し、価格はキロ1200円でした。23年は同1.8万トンでキロ2400円と倍の価格になっていました。

 欧州のウナギが絶滅危惧種になった背後には、中国で加工して大量に輸入していた我が国の巨大な胃袋が背後にあったのです。