中国人はその価値をすでにわかっている─シベリアは「極寒の流刑地」ではなく、膨大な資源が眠る豊かな土地だ

AI要約

2024年3月12日、ウクライナの親ウクライナ勢力がロシアに侵攻し、クルスク州とベルゴロド州を急襲。シベリア出身の兵士も多数参加。

シベリアはロシアの77%を占め、豊富な資源を抱えながらも経済的に厳しい状況にある。シベリア大隊はプーチン政権に立ち向かうために結成された。

ロシアの石油や天然ガスの多くはシベリアから産出され、経済的に重要。しかし、西側制裁により輸出先は中国が主となっている。

中国人はその価値をすでにわかっている─シベリアは「極寒の流刑地」ではなく、膨大な資源が眠る豊かな土地だ

ロシアの「シベリア」と聞くと、強制収容所を思い浮かべる人も多いだろう。だが気候が厳しく、血なまぐさい歴史と紐づけられているこの地には、豊かな文化と資源がある。

2024年3月12日の出来事は、ロシアとウクライナの戦争に新たな展開をもたらした。親ウクライナ勢力は、戦車や装甲車で100キロもロシアに侵入し、クルスク州とベルゴロド州を急襲したのだ。

これらの「親ウクライナ勢力」はウクライナ人ではなく、ロシア人で構成されていた。主に自由ロシア軍団、ロシア義勇軍団、シベリア(またはシビル)大隊という、反プーチンを掲げる3つの準軍事組織である。

シベリア大隊の兵士たちは約8000キロ、6つのタイムゾーンを横断して戦地へ赴いた。世界で最も寒い主要都市であるヤクーツクを抱えるサハ共和国(ヤクーチア)や、モンゴルと隣り合い、遊牧文化を持つブリヤート共和国など、ロシアの少数民族地域から集まった人々だ。

ウラジーミル・プーチンは、兵士のほとんどを、ロシア人口の28%を占めるこうした少数民族から徴兵している。そのなかにはシベリア出身者も多い。

英「BBC」の報道によれば、ロシアにおいて戦争による死亡率が最も高い10の地域のうち、6つの地域がシベリアにあるという。そして、こうした地域の人々の多くは、この戦争が嘘の上に成り立っていることを理解している。高齢者たちは、かつて罪のない人々が投獄され、拷問され、殺された収容所のことを覚えている。

シベリア大隊が結成されたのは、より良いロシアのために戦ってプーチンを弱体化させ、ロシアの支配から脱却するため、あるいは少なくとも、より大きな自治権を得るためだ。彼らはウクライナを守るために、シベリアからロシアの他端へと向かった。

シベリアはウラル山脈以東のロシアの全領土を占めており、それはロシア国土の77%にあたる。人口の大半は比較的温暖な南部、あるいはシベリア鉄道やその他の鉄道沿線に集中している。南部にまたがる20の行政地域における一人当たりのGDPは、ロシアで最低の部類だ。

だがシベリアは、現状よりもはるかに繁栄できるはずだ。

同地には広大な針葉樹林があり、漁業が盛んで、化石燃料、ダイヤモンドや金などの鉱物がある。米国の故ジョン・マケイン上院議員は、ロシアを「国を装ったガソリンスタンド」と呼んだ。ロシアの石油と天然ガスの大半はシベリア産であり、それはこの10年間、同国の歳入の30~50%を占めてきた。

なお、西側諸国による制裁を受けているいま、ロシアが輸出する化石燃料の半分は中国に流れている。ロシア経済を破壊する最も手っ取り早い方法は、ウクライナが過去1年で実行しようとしていたように、無人機による空爆でシベリアから中国への輸送ルートを遮断することかもしれない。