目覚めたら突然、「行ったことのない土地の訛り」でしか話せなくなっていた女性─「外国語様アクセント症候群」とは

AI要約

ゾーイ・コールズは突然、ウェールズ訛りで話すようになり、その影響で日常生活に思わぬ困難が生じる。

診断された外国語様アクセント症候群により、コールズの話し方はウェールズ語そのものとなり、周囲を驚かせる。

新しい話し方による生活上の問題や誤解が生じ、様々な困難に直面するが、コールズは対処しようと努力する。

目覚めたら突然、「行ったことのない土地の訛り」でしか話せなくなっていた女性─「外国語様アクセント症候群」とは

ゾーイ・コールズはウェールズに一度も行ったことがないにもかかわらず、強いウェールズ訛りでしか話せなくなってしまう。この「新しい話し方」のために、彼女は日常生活で思いがけない困難に見舞われ、性格まで変わってしまったという。彼女の「突然の変化」はなぜ起こったのか──。

私はいつも自分の訛りを意識してきた。1996年、8歳のときに、一家でケントからリンカンシャーのスタンフォードに引っ越したが、私の河口域英語(英国の上流階級の英語と、ロンドンの労働者階級が話すコックニーと呼ばれる英語の中間的存在。テムズ川河口域で話されている)はひどく目立っていた。

私には他の人たちの話し方が北部人のように聞こえたし、彼らは私を「(テレビドラマの)『イーストエンダーズ』の話し方」だとからかった。

訛りを真似するのにも苦労した。14歳のとき、スペインのランサローテ島に行き、そこでリバプールとバーミンガムから来た2人の女の子と友達になった。私が彼女たちの訛りを真似しようとしているのが、家族にはおかしくてたまらないようだった。 父は「君の話し方はどうかしてる」と笑っていた。

私は成人してからもケント訛りを話し続けていた。しかし、2022年に、脳の信号が原因で身体機能や感覚に異常が生じる機能性神経障害(FND)を発症した。運動障害や発作を引き起こしたが、一時的にチックになったり、ろれつが回らなくなったりすることもあった。

そのため、2023年6月のある日、目が覚めて自分の話し方が違って聞こえたときも、それほど驚きはなかった。一時的なものだろうと思った。だが、2日たってもまだ違和感は続いていた。隣人は私にこう言った。「あなたの話し方は私の叔母にそっくり。彼女はウェールズ南部の出身なの」

当初、この新しい話し方の癖はそれほどはっきりしたものではなかった。「ドイツ語のように聞こえるなあ。でも、そのうち元に戻るだろう」と思っていた。だが、それはより強くなっていった。話すこと自体には何の問題もなく、大きく、はっきりと話すことができた。

私の話し方は、まさにウェールズ語そのものだった。友達や家族はそれを面白がった。私はウェールズに行ったことがない。ウェールズを舞台にしたドラマ『ギャビンとステイシー』すら見たことがないのだ。

2週間後、私は医者に診てもらいに行ったが、最終的に「外国語様アクセント症候群」と診断されるまでには数ヵ月を要した。外国語様アクセント症候群は通常、頭部の外傷や脳卒中後に、人のアクセントが突然変化する言語障害だ。しかし、医者は私が突然ウェールズ語訛りを話すようになったきっかけを見つけることができなかった。

私はこの病の面白い部分を見つけようとしてみたものの、最初は動揺し、多くの困難を引き起こした。電話したときに、家族ですら私だとわからなかったのだ。緊急時に私に電話しなければならない場合、子供たちの通う学校の先生たちが本当に私だと信じてくれないのではないかと心配だったので、わざわざ学校に行って説明したりもした。

私が利用している銀行にはセキュリティのための音声認識機能があるが、アクセントの変化について説明するのは難しかった。窓口係は困惑して、「昔のアクセントで話せませんか?」と聞いてきた。彼女はその後、「テレフォンバンキングは避けたほうがいいでしょう」と結論づけた。