再び問われる「同盟の真価」 NATO首脳会議 中露の覇権行動を抑止せよ ロンドン支局長 黒瀬悦成

AI要約

ウクライナ侵略を受け、NATOは集団防衛態勢の強化と中国への厳しい姿勢を確認。

対露抑止の取り組みが広がり、複数の国が軍事支援やミサイル防衛に取り組む。

NATOは世界で最強の同盟としてロシアの専横に立ち向かい、国際秩序の維持に貢献。

創立75周年を迎えた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ウクライナを侵略したロシアに対する集団防衛態勢の強化を確認したのに加え、ロシアの侵略を下支えする中国をこれまでになく厳しく指弾した。かつて東西冷戦を西側陣営の勝利に導いたNATOは、欧州とインド太平洋地域の覇権主義勢力である中露による国際秩序の弱体化の阻止に向け、「同盟の真価」を改めて問われている。

■対露抑止の取り組み広がる

「NATOの本質とは抑止なのです」

NATOのストルテンベルグ事務総長は11日の記者会見でこう述べ、ロシアの撃退を目指すウクライナへの長期支援に加え、ロシアによるこれ以上の侵略を食い止めるための幅広い取り組みが進んでいると強調した。

NATO全体としての軍事支援に加え、ウクライナに支援の継続を確約する2国間の安全保障協定を結んだNATO加盟国とパートナー国は、11日にルーマニアの締結で23カ国に達した。

欧州防衛では、ロシアによるミサイルの脅威に対抗するため、米国がドイツ国内への長距離攻撃兵器の配備を決めたほか、独仏伊とポーランドの4カ国が11日、地上発射型巡航ミサイルの共同開発で合意した。

欧州南東部のルーマニアとブルガリア、ギリシャは同日、ロシア軍の侵攻に備え、互いの軍部隊を迅速に移動可能にするための協定を結んだ。

ソ連との東西冷戦で西側の自由主義陣営を束ねたNATOは、冷戦が西側陣営の勝利で終結後、東欧やバルト三国など旧東側陣営の国々を取り込んで拡大した。ロシアによる再侵略を何より恐れるこれらの国にとり、NATOが唯一にして最大のよりどころだからだ。

■「戦争前夜」、NATOに重み

ロシアはウクライナ侵略について「冷戦後に欧米に奪われた生存圏の回復だ」と正当化する。残念ながら日本にもそんな身勝手な理屈に歪んだ理解を寄せる者がいる。

だが、主権国家ウクライナの生存権を否定したロシアの専横を許すことは、同国との連携を強める中国も威圧的行動を活発化させ、世界秩序をさらに不安定化させるのは論をまたない。

だからこそNATOは今回の首脳会議に向けて「インド太平洋重視」を打ち出し、日韓などのパートナー国と連携のグローバル化を進めた。

ストルテンベルグ氏の言葉を借りれば、NATOは「世界で最長かつ最強の同盟」だ。欧州では今やロシアとの「戦争前夜」にあるとの指摘が相次ぐ中、NATOの価値と責任はこれまで以上に重みを増している。(ロンドン支局長 黒瀬悦成)