NATOと連携強化急ぐ韓国 尹錫悦大統領、露朝軍事協力は「決定的脅威」と危機感

AI要約

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3年連続でNATO首脳会議に出席し、露朝の共闘に対抗する姿勢を示す。

ロシアと北朝鮮の軍事協力に対抗するため、韓国政府はNATOとの協力を強化し、ウクライナへの支援方針を再検討している。

尹錫悦大統領は訪米中に海洋進出を強める中国に対抗するため、日本やオーストラリア、ニュージーランドとの協力策も模索する。

【ソウル=桜井紀雄】米ワシントンで9日に始まる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議には、日本の岸田文雄首相らとともに韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が出席する。NATO首脳会議への尹氏の参加は2022年の就任以来、3年連続。ウクライナを侵略するロシアが北朝鮮と軍事協力を深める中、尹氏はNATOと連携して露朝の共闘に対抗していく姿勢を打ち出す。

「ロシアと北朝鮮の軍事協力に対して強いメッセージを発信し、NATOとの協力策を議論する」

尹氏の訪米に先立ち、韓国大統領府高官は、NATO首脳会議出席の狙いをこう説明した。自由や人権といった価値を共有する民主主義国家との連帯を外交の柱に掲げる尹氏は就任以来、日本やNATO加盟国との関係強化を重視してきた。だが、今回、韓国にとってNATOとの連携がより切迫したものとなった。

6月に北朝鮮を24年ぶりに訪れたロシアのプーチン大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と有事での軍事援助を記した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結。プーチン氏は北朝鮮への武器支援を「排除しない」と明言した。尹氏は今月8日報道のロイター通信との書面インタビューで、露朝軍事協力について「朝鮮半島と欧州の平和と安保にとって決定的な脅威で、深刻な挑戦だ」と強調した。

露朝が条約を締結した直後に韓国政府は、ウクライナに殺傷兵器を供与しないという従来の政策を再検討する方針も表明している。尹氏は、ウクライナへの具体的な支援内容に関し、露朝の「武器取引や軍事技術移転など協力レベルを見極めながら判断する」と説明。「韓国と北朝鮮のどちらがより重要で必要な存在なのか、ロシアが賢明に判断することを望む」と強気のメッセージも発している。

尹氏は、訪米中に日本やオーストラリア、ニュージーランドとの4カ国首脳会議にも出席し、海洋進出を強める中国を念頭に、3カ国との協力策も打ち出す。

韓国が今回、幅を広げた新たな外交・安保路線を会議参加各国にどれだけ印象付けられるか注目される。