中国、EV輸出と生産でラテンアメリカに進出 ペルーでは大型港湾を開発 南米初の拠点へ

AI要約

中国製の電気自動車(EV)に対する米欧の関税問題と、中国の対応策について述べられている。

中国のEVが主にラテンアメリカへ輸出され、現地生産が進められていることが明らかになっている。

中国とラテンアメリカの貿易関係が強化され、投資や港湾開発などさまざまな分野で協力が進んでいる。

中国、EV輸出と生産でラテンアメリカに進出 ペルーでは大型港湾を開発 南米初の拠点へ

中国製の電気自動車(EV)に対し、米国が今年5月、異例の関税100%を課し、欧州連合(EU)も6月に17.4%~37.6%の追加関税を決定するなど、欧米の中国包囲網が拡大している。その中国は、国内のEV余剰生産問題を解決するため、ラテンアメリカへの輸出と現地生産への投資にシフトしていることが分かった。

オーストラリアのシンクタンク「東アジアフォーラム」によると、安価な中国製EVの輸出は、特に中国企業が現地に研究開発施設や生産工場、販売センターを設立したブラジルやメキシコなどで大幅に増加している。

同シンクタンクによると、中国は海外でのEV販売と生産能力の拡大に向け、発展途上市場の開拓に注力。欧米の保護主義的措置が続くなか、中国の低価格EVの総輸出量は2021年から2022年にかけて前年比102%増。2022年だけでもEVを約63万台輸出した。

これらの数字の伸びは特にラテンアメリカが際立っている。中国のEV総輸出台数の10%を占める東南アジアなど、先進市場や中国に近い市場には今のところまだ及んでいないものの、2023 年の販売額が前年比2倍超の27億ドル(約4360億円)に達した。

ラテンアメリカでは、電気自動車市場を追求するためであれ、重要なリチウムなどの鉱物を追求するためであれ、中国企業は貿易と投資に対して漸進的なアプローチを採用していると同シンクタンクは分析する。

例えば、中国大手メーカーBYDはまず、電気バスなどの商用車を販売し、パートナーとしての信頼関係を確立した後、自家用EV販売に進出し、車両の輸出だけでなく、生産と研究開発の現地化することにも重点を置いているという。

BDYは2014年に早くもブラジル南東部の主要都市カンピナスで電気バスと商用車の輸出を開始。その後、カンピナスにバッテリーと太陽光発電の製造拠点を作り、スマートグリッドやLED技術、ソーラーパネルに重点を置いた研究開発センターも開設した。2019年にはブラジル北西部マナウスにバッテリー工場を建設する意向を発表。現在は北東部バイーア州にEVとバッテリーの工場を建設し、自家用EV生産に拡大している。

また、メキシコでは、過去2年で中国の自動車メーカーの活動が顕在化。メキシコでの中国製部品と自動車製造の急速な成長により、米国政府は、中国が米国・メキシコ・カナダ3カ国の北米自由貿易協定(NAFTA)を利用して、米国の関税を回避していることへの懸念が高まっている。だが、そこでもブラジルと同様の「商業ベースから自家用に」という戦略に沿い、BYDはメキシコ市場向けにメキシコでも現地生産を計画している。

一方、アフリカから南太平洋まで、グローバルに影響力を拡大する中国の新たなターゲットとされるラテンアメリカでの狙いはEVだけではない。中国はすでに南米・ペルーの首都リマの北に位置する都市チャンカイで35億ドル(約5650億円)規模の大型港湾開発に着手し、今年中には完成する予定で、南米で中国が管理する最初の港となり、同地域の貿易市場に直接アクセスできるようになる。

ロイター通信によると、中国国有企業、中国遠洋海運集団(COSCO)が事実上所有するこの港は、最大級の貨物船が利用でき、太平洋を渡って直接アジアに向かうことができるため、一部の輸出業者にとっては航海時間が2週間短縮されることになるという。

中国・ペルー両国は、チャンカイ港がペルーからの銅輸出と、現在はパナマ運河を通ったり、大西洋を迂回して中国に運ばれているブラジル西部の大豆輸出の両方にとって、地域のハブとなることを期待しているという。

米紙マイアミ・ヘラルドによると、中国とラテンアメリカ諸国との貿易額は、2000年から20年間で120億ドル(約1兆9364億円)から3150億ドル(約50兆円)に増加。「ダボス会議」で知られる世界経済フォーラムは、貿易額が2035年までに2倍以上の7000億ドル(約113兆円)に達すると推定している。

また、米シンクタンク「アメリカンエンタープライズ研究所」の中国グローバル投資トラッカーによると、2005年以降、中国の中南米およびカリブ海諸国への投資は1550億ドル(約25兆円)を超え、銀行やエネルギーを含むいくつかの重要な経済セクターをターゲットにしている。ちなみに、同地域の22カ国が中国の「一帯一路」経済圏構想への参加を批准する覚書を中国と締結している。