追加関税、上等! それでも中国BYDが欧州EVメーカーを凌駕するこれだけの理由

AI要約

BYDは、EUによる中国製EVへの追加関税を受けているが、広告キャンペーンにより注目を浴びている。王伝福による強力なリーダーシップと製品戦略がBYDの成功の鍵となっている。

EUは中国製EVの関税引き上げを決定し、BYDはこれに直面しているが、王伝福は世界第2位のEVメーカーとしての地位を着実に確立している。

王伝福は、BYDの成長に自信を持ち、自動車産業のパワープレイヤーとしての地位を強化している。

追加関税、上等! それでも中国BYDが欧州EVメーカーを凌駕するこれだけの理由

EUは域内の自動車産業を守るため、中国製のEVに追加関税を課すことを決めた。だが「中国のテスラ」とも呼ばれるBYDにとって、この規制強化は痛くもかゆくもないようだ。BYDの強みと戦略に英紙が迫った。

サッカー欧州選手権が開幕した6月14日、開催国ドイツはミュンヘンで開幕戦を飾った。ミュンヘンはサッカーの街として有名だが、それだけではない。ここは、ドイツを代表する自動車メーカー、BMWの本拠地なのだ。

しかし、開幕戦がおこなわれたスタジアムやテレビ中継にBMWやフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツといったドイツメーカーのロゴが現れることはない。このヨーロッパ最高峰の国際大会のスポンサーを務める唯一の自動車メーカーが、中国の比亜迪(BYD)なのだ。

自動車売買サイト「オートトレーダー」によると、この広告キャンペーンの結果、大会最初の週末の6月14~16日に、BYDの公式サイトの閲覧数が前週比で69%増加したという。

BYDは、世界最大規模の電気自動車(EV)メーカーとしてイーロン・マスクのテスラと争っており、ヨーロッパは重要な輸出先だ。しかし、欧州連合(EU)が同社製品に対する追加関税を課すと発表し、BYDは欧州選手権さながらの波乱に満ちた闘いに直面している。

EUが問題視しているのが、中国のBYD、吉利汽車、上海汽車集団の3社が中国政府から受けているとされる不公正な補助金だ。EUは、ヨーロッパの自動車産業と労働者300万人を守るため、中国から輸入されるEVの関税を引き上げることにした。

だが関税だけではBYDのヨーロッパ市場への進撃を遅らせるには不充分だと、多くの専門家はみている。

BYDの創業者の王伝福にとっては、米国とEUによる関税は、中国の自動車産業が新たな強さを得た証拠だ。報道によると、中国のイーロン・マスクとも評される王は、6月に重慶で開催された自動車業界のカンファレンスで、業界幹部らを前にこう語った。

「私たちが強いからこそ、彼らは私たちを恐れるのだ」

王は湖南省で冶金学を学んだ後、1995年にバッテリーメーカーとしてBYDを設立した。その後、モトローラやノキアを顧客に獲得し、2003年には倒産した自動車工場を買収してハイブリッド車を生産するようになった。

以降、王はBYDを中国の寧徳時代新能源科技(CATL)次ぐ世界第2位のバッテリーメーカーに、そして世界第2位のEVメーカーに育て上げた。2023年第4四半期には販売台数でテスラを上回っている。