インドで進む「河川連結プロジェクト」は水不足を悪化させる可能性も

AI要約

インドでの猛暑により200人以上の死者が出る中、水不足に悩む女性たちの苦労が明らかになっている。

政府主導のプロジェクトにより、30の河川が連結され、年間2000億立方メートルの水が供給される見通しである。

19世紀から提案され続けてきた河川連結プロジェクトが、現在実行に移されようとしている。

インドで進む「河川連結プロジェクト」は水不足を悪化させる可能性も

5月から6月にかけて、インドは気温が50度前後に達する猛暑に見舞われた。カタールメディア「アルジャジーラ」によれば、あまりの暑さに学校は閉鎖され、少なくとも200人が命を落としている。

この殺人的な暑さのなか、インドでは生活用水や飲み水に困っている人が多い。英公共放送「BBC」によれば、同国の「何百万人もの女性にとって、飲料水を汲むことは過酷な日々の仕事だ」という。

「彼女たちは焼けつく夏も凍てつく冬も、プラスチックの容器や土製の壺を頭の上に乗せ、バケツを手に持ち、毎日何マイルも歩いて、水の備蓄をしている」

BBCの取材に応えたある女性は、いまにも干上がりそうな湖までの道のりを毎日4~5時間かけて往復して水を汲んでいる。汚れた水をろ過する手間も必要だ。

彼女の暮らす村は、地域で最も降雨量が多い村の一つだ。それでも「近くの井戸や水源が枯渇するため、村の女性たちは毎年少なくとも4~5ヵ月の間は、遠くから水を汲むしか選択肢がない」のだという。

「インドではしばしば、国の一部で深刻な水不足が起こる一方で、同時に別の地域で洪水が発生する。こうした二重の悲劇が起こると、インド人はこのアンバランスを調整し、余剰分の水を他の地域に渡せないものかと願う」

そう報じるのは、英メディア「ハカイ・マガジン」だ。そしてインド人のこの「願い」は、もしかすると叶うかもしれない。国内の河川を連結し、水の豊富な土地から足りていない土地に供給する事業が、インドで始動しているのだ。

政府が主導しているこのプロジェクトでは、30の河川が連結される予定だ。計画が完了すれば、推定で年間約2000億立方メートルの水を国内で転送できる。数千万ヘクタールの農地を灌漑し、インドの水力発電を強化することも目的のひとつだ。またこれにより、飲料水不足に困っている場所にも水が行き渡るとされている。

プロジェクトの起源は19世紀、英国の灌漑技術者であるアーサー・トーマス・コットンが提案したものに遡る。南インドの河川を連結して灌漑を改善し、積荷の移動をより簡単かつ安価にすることが彼の狙いだった。時は進み、1970年代には、インド最大の河川であるガンジス川とカーヴェリ川を連結する案もあがった。

河川連結プロジェクトは繰り返し練り直され、なかなか実行に移されなかったが、2002年と2012年、最高裁判所が政府に対して事業の始動を命じた。その後、実際に動きはじめたのは、ナレンドラ・モディが首相に就任してからだった。