イスラエル軍の指揮統制の問題が浮き彫りに...最も明確に表れた3つの事例

AI要約

イスラエル国防軍(IDF)がガザでの掃討作戦を展開し、指揮統制の問題が顕在化している。

緊迫した中東情勢の中で、IDFが紛争で多くの死傷者を出しており、アメリカ製武器の使用が問題となっている。

戦争犯罪やIDF内部の規律の問題も浮上し、指揮統制が深刻な課題である。

イスラエル軍の指揮統制の問題が浮き彫りに...最も明確に表れた3つの事例

イスラエル国防軍(IDF)はプロ意識の高い軍隊という評判が高く、「世界で最も道徳的な軍隊」を自負してもいる。しかし、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスに対する掃討作戦などから浮かび上がるのは、指揮統制の深刻な問題だ。

最初に確認しておきたいのは、IDFがガザで甚大な人的被害を出しているということだ。これまでに死亡したパレスチナ人は3万8000人以上で、女性や子供も多い。家を追われた人々は約190万人に上る。

IDFがガザ最南部ラファでの作戦を続けるなか、アメリカが供与した武器の使用を疑問視する声も広がっている。5月26日にラファの避難民キャンプを狙った空爆では少なくとも45人が死亡したが、これにはアメリカ製の爆弾が使用されていた。

中東では緊迫した状況が続く。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは6月、昨年10月以降で最大の攻撃をイスラエルに仕掛け、IDFはレバノンに全面攻撃を行うと警告している。同じく6月には、シリアのアレッポ近郊へのIDFによる空爆で、イランの軍事顧問が死亡する事態も起きた。

戦闘が拡大する可能性は十分だ。となれば、IDFが指揮統制を欠いているように見える今の状況は、さらに緊迫度を増す。ここにはイスラエルを支援し、武器を供与するアメリカの立場も絡んでくる。

残虐行為をSNS投稿

指揮統制の問題は、IDFが戦争犯罪を犯しているという疑惑に最もよく表れている。今回の紛争でIDFには、飢餓を意図的に引き起こし、拷問や大量処刑を行い、爆弾や無人機、ミサイルを軍事目標以外にも使用しているといった疑いがある。どれも国際人道法と武力紛争法に違反する。

ここで、指揮統制の問題が最も明確に表れた事例をいくつか挙げてみよう。

1つ目は4月初め、ガザで活動中の国際NGOワールド・セントラル・キッチンの職員7人が空爆で死亡した件。IDFはこの責任は中堅将校らにあるとした。IDFと、イスラエル国防省傘下の占領地政府活動調整官組織(COGAT)の発表によれば、ワールド・セントラル・キッチンはIDFと適切な調整を行った上で活動していたが、中堅の将校が攻撃命令を下したという。

2つ目の事例は2月後半、IDFのヘルツィ・ハレビ参謀総長が自国軍の兵士に対し、自分たちの戦争犯罪の現場を撮影・公開しないよう公に要請したことだ。IDFはこの数カ月、戦争犯罪に大々的に関与しており、兵士らは違法行為を自らSNSに投稿している。IDF内部の規律維持に深刻な問題がある証拠だが、それがハレビの要請後も続いているという事実は状況の深刻さを示している。