マクロン大統領、アタル首相に「当面の」留任要請 フランス政治の混迷続くなか

AI要約

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、国民議会選挙で過半数を獲得する党がなかったため、首相に留任を要請。

政治的な行き詰まりが生じた中、アタル首相は辞意を表明し、与党連合が多くの議席を失ったが極右より上位となった。

政治的な調整を巡り左派連合内で候補者調整が行われたが、国民議会ではRNが期待を下回り、暗礁に乗り上げた。

マクロン大統領、アタル首相に「当面の」留任要請 フランス政治の混迷続くなか

ポール・カービー、BBCニュース(パリ)

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は8日、国民議会(下院)選挙で過半数を獲得する党がなかったことを受け、ガブリエル・アタル首相に対し、「国の安定のため当面の」留任を要請した。

7日投開票された選挙でマクロン氏の与党連合を率いたアタル氏は、結果を受けて8日、マクロン氏に辞意を伝えた。しかし、マクロン氏がこれを受け入れなかった。

与党連合は多くの議席を失ったが、勝利が予想されていた極右「国民連合(RN)」を上回り、左派連合「新人民戦線(NFP)」に次いで2位となった。

この予想外の結果により、どの政党も単独で政権を樹立できず、フランス政治は行き詰まっている。

マクロン氏が国民議会の解散・総選挙を決めた後に結成されたNFPは、次期議会の第1勢力として首相を選ぶ権利を得たと主張している。

ただ、この左派連合を構成する急進派の「不屈のフランス(LFI)」、穏健な社会党、緑の党、共産党の各党を満足させられる、はっきりした首相候補者はいない状況だ。

アタル氏は7日夜に辞意を表明。ただ、職務上必要とされる間は首相にとどまる可能性を残していた。

8日朝にアタル氏がエリゼ宮(大統領官邸)を訪れ辞意を伝えても、それが受け入れられないことは広く予想されていた。

マクロン氏は9日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議のためにアメリカを訪れる予定。26日からはパリでオリンピックが開かれる。

アタル氏にいつまで留任を求めるかは明らかではない。マクロン氏は、フランスには現在、平穏な時期が必要だとしている。

退任するブルーノ・ル・メール財務相は8日、フランスの経済状況について、金融危機と経済衰退の危機に直面していると警告した。

国民議会選の結果が出て以来、マクロン氏は政治的な争いから距離を置こうとしている。7日夜の声明では、「フランス国民の選択」を尊重するとしながらも、大統領として次の必要な決定をするのは、議会の全体像が明らかになってからだとした。

マリーヌ・ル・ペン氏とジョルダン・バルデラ氏が率いるRNは、6月30日の第1回投票で大きくリードしたことから、今回の選挙で勝利すると広く予想されていた。

しかし実際には、1000万人以上がRNや保守派グループを支持し、RNは多くの票を獲得したものの、世論調査が示していた予想議席数には遠く及ばなかった。

定数577の国民議会で絶対過半数の289議席を獲得するとの野望を掲げていた、RNは結局、143議席にとどまった。

決選投票では、RNの候補を破るため、左派と中道派が候補者を一本化。200人以上の候補者が辞退した。ル・ペン氏とバルデラ氏は、この調整を激しく非難した。

しかし両氏は8日、前を向こうとしていた。

「わずか2年で信じられないほど前進しており、短期的には私たちの勝利は避けられないものとなっている」とル・ペン氏は述べ、RNやその協力政党を支持した有権者1000万人に感謝を表明。「得票数でも議員数でも1位の政党だ」とした。

一方、バルデラ氏は、欧州議会での今後の役割に集中する決意を固めた。

バルデラ氏は欧州議会で、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相が発足させた新会派「欧州の愛国者」を率いることになっている。

ハンガリーは今月、欧州連合(EU)の議長国を務めている。オルバン氏はすでに、EU首脳としては2年以上ぶりに、ロシアを訪問してウラジーミル・プーチン大統領と会談し、欧州の首脳らを怒らせている。

フランスの今回の国民議会選は、1カ月前の欧州議会選でRNがフランスで勝利したことを受け、マクロン氏が実施を決めたものだった。

(英語記事 Macron asks French PM to stay on as political deadlock continues)