「ポストSDGs」のヒントはギリシャに学べ

AI要約

2027年にはポストSDGsの議論が本格化するが、2024年を「ポストSDGsの検討元年」にすべき。

外務省がポストSDGsに向けた有識者懇談会を設置し議論が進められている。

2030年に向けたSDGsの達成状況が危機的であり、2030年までに新たな目標設定が必要となる。

「ポストSDGs」のヒントはギリシャに学べ

2030年に向けたSDGs(持続可能な開発目標)の折り返し点を超えた今、2024年を「ポストSDGsの検討元年」にしたい。最近、欧州を訪れ、初めてギリシャに足を運んだ。特に最近インバウンドの盛り上がりで話題の「サステナブル・ツーリズム」の観点から、ポストSDGsに向けた視点を得るためのヒントが多く見つかった。(千葉商科大学客員教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷秀光)

4月22日、外務省で上川陽子外務大臣の出席の下、「国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会」第1回会合が開催された。外務省によれば、上川大臣は冒頭で「自由闊達な議論を通じ、2030年以降も見据え、我が国の持続的成長と国際社会全体の持続可能性の確保のあり方をクリエイティブに検討していきたい」と述べた。

これにより、ポストSDGsの検討が正式にキックオフされたといえる。国連のSDGsは2030年までに貧困や格差をなくすことなどを目指しているが、新型コロナやウクライナ情勢の影響で達成が困難と指摘されている。

今年9月の国連会議では目標達成の取り組みの加速と2030年以降の新たな目標設定が議論される見通しである。これに先立ち、外務省は先月下旬に大学教授やエネルギー専門家など10人をメンバーとする有識者懇談会を設置。外務省は次の目標設定を巡る各国の主導権争いを想定し、早期の議論開始で国連での主導を目指していると思われる。

国連事務総長は、2023年9月のSDGサミットで、SDGsの169ターゲットのうち進捗が順調なものは約15%に過ぎず、半分近くは不十分、約30%に至っては停滞・後退しており、2030年までのSDGs達成に向け危機的状況にある旨を強調した。

SDGsは2015年9月に採択以降、4年ごとにストックテイクされてきた。このため2019年と2023年にSDGサミットが開催された。次回は2027年であり、2030年まで残すところあと3年というタイムラインになる。

SDGsの前身であるMDGs(ミレニアル開発目標)は2000年から2015年までの期間で、終了3年前の2013年から次期の在り方について議論が始まり3年間の議論を経て2015年にSDGsに結実した。これに倣うと、2027年にはポストSDGsの議論が本格化するであろう。

そこで、2027年に検討を開始するのでは遅い。2030年に向けたSDGs(持続可能な開発目標)の折り返し点を超えた今、2024年を「ポストSDGsの検討元年」にすべきと思うが、外務省の動きも注視していく必要がある。