北朝鮮から砲弾を得るため韓国と敵対するロシア、その代償を払わせるべきだ【6月20日付社説】

AI要約

金正恩総書記とプーチン大統領が包括的・戦略的パートナーシップ協定に署名し、自動軍事介入の条項が復活した。

北朝鮮とロシアの同盟関係が強化され、技術面や食糧支援などで協力が深まっている。

ロシアが北朝鮮の軍事技術開発を支援する姿勢を示し、朝ロ同盟の成立が韓国の安全保障に悪影響を及ぼす可能性がある。

北朝鮮から砲弾を得るため韓国と敵対するロシア、その代償を払わせるべきだ【6月20日付社説】

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記とロシアのプーチン大統領は19日に首脳会談を行い「包括的・戦略的パートナーシップ協定」に署名した。プーチン大統領は「双方のどちらかが攻撃を受けた場合、相互に支援を行う内容が含まれている」と説明し、金正恩総書記も「両国は同盟関係という新たな高いレベルに上がった」と述べた。「自動軍事介入」を定める条項も復活するとみられる。

 北朝鮮とロシアが1961年に締結した友好条約には「一方が攻撃を受ければ速やかに軍事支援を行う」との条項が含まれていた。同年北朝鮮は中国とも自動軍事介入条項を含む同盟条約を締結した。しかし冷戦終了後の2000年に北朝鮮とロシアは自動軍事介入を含まない親善条約に署名した。同盟関係が見直されたのだ。今回金正恩総書記はロシアによるウクライナ侵攻を支持し、プーチン大統領はこれに感謝の意を伝えた。砲弾不足に苦しむロシアは北朝鮮からの500万発の砲弾支援で戦況を好転させた。今後もロシアに必要な砲弾やミサイルを提供するのは北朝鮮だけだ。金正恩総書記もプーチン大統領に対して軍事面・技術面での支援や食糧支援を強く求めている。2人の独裁者の間で利害関係が一致した結果、冷戦時代の遺物が今回復活したと言えるだろう。

 プーチン大統領は「北朝鮮との軍事技術協力を排除しない」とも明言した。金正恩総書記が完成を目指す偵察衛星、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、原子力潜水艦などの開発にはロシアからの支援が必要だ。昨年9月にプーチン大統領は「北朝鮮の人工衛星開発を支援できる」と発言したが、人工衛星技術は偵察衛星やICBM開発とも直結する。今回の首脳会談にはロシア宇宙公社の社長も同席した。北朝鮮がロシアの支援を受け偵察衛星を保有するようになれば、韓米連合軍の動きをリアルタイムで把握できるだろう。ICBMの完成で米本土を直接核兵器で攻撃する能力も確保した場合、韓国に対する米国の核の傘が必要なときに機能しない恐れも出てくる。そのため朝ロ関係の同盟への格上げは韓国の安全保障にとって致命的だ。

 プーチン大統領は今回の訪朝前に「韓国が(ウクライナに)武器を直接供与しないとした決定を高く評価する」と述べた。その一方で韓国にとって最大の脅威である北朝鮮とは軍事同盟を締結しただけでなく、武器技術まで提供可能と明言した。ロシアは国連安保理の北朝鮮制裁を堂々と無視している。これは韓国の善意に対する裏切りであり、韓国国民にとって直接の脅威だ。プーチン大統領が知るべきことは、韓国も朝ロの脅威に対抗する軍事手段を持っているという事実だ。これは北朝鮮が持つ古い砲弾とは比較にならない。プーチン大統領と金正恩総書記による「危険な取引」をあいまいに見過ごしていると、韓国の安全保障は一層の脅威にさらされるだろう。何らかの行動を取らねばならない。