世界唯一「半導体の血管」設計技術を保有、創業7年目の韓国企業

AI要約

台湾TSMCの力は半導体設計資産(IP)から出ており、TSMCは世界最大手のファウンドリーである。

半導体IPは複雑なチップの構成要素であり、設計上の基本ブロックとして使用される。

オープンエッジテクノロジーはメモリーとNPUのIPを持つ世界唯一の会社であり、エッジ用半導体設計の分野で注目されている。

世界唯一「半導体の血管」設計技術を保有、創業7年目の韓国企業

ファウンドリー(半導体委託生産)世界最大手の台湾TSMCの力は半導体設計資産(IP)から出る。半導体IPは複雑なチップの特定部分をあらかじめ回路として具現した一種の概念ブロックだ。レゴブロックを作る時に基本ブロックが必要なように、複雑な半導体を設計する際に各所で使われる基本的で必須の構成要素だ。

◇TSMC力の源…独歩的なIP

エヌビディアやクアルコムなど世界の半導体設計企業がTSMCを訪ねる理由もここにある。TSMCに登録されたIPは6万件以上とされる。サムスン電子の10倍水準だ。多くの設計基本ブロックに対応するので顧客が求めるチップをより速く精巧にできる。

IPを作る所も別にある。最も有名な会社が英国のアームだ。現在スマートフォンに搭載されるほぼすべての低電力中央処理装置(CPU)がアームのIPを基礎に作られる。半導体設計に特定のIPを使ってチップを生産すればIP会社は設計会社からロイヤルティーを得て収益を出す事業構造だ。設計上の概念としてだけ存在する商品なので物理的な在庫管理も必要ない。工場も資源も必要ない、徹底した「頭脳の戦い」だ。技術障壁が高く、アームなど少数の企業の寡占市場となっている。

◇メモリーとNPUのIP持つ世界唯一の会社

オープンエッジテクノロジーは韓国で数少ない半導体IP会社だ。半導体チップ設計に必要なIPを作って世界の半導体会社に供給する。いまも従業員の90%が研究開発人材だ。主力設計領域はメモリー半導体と神経網処理装置(NPU)のIP。2つの領域にわたるIPをいずれも保有する世界唯一の会社だ。この会社のイ・ソンヒョン代表は中央日報とのインタビューで、「頭脳(NPU)が働くには栄養(データ)を供給しなければならない。例えるなら私たちは心臓(メモリー半導体)と頭脳をつなぐ血管を作る会社」と話した。

NPUは人工知能(AI)の性能を左右するチップだ。作動原理が人の脳神経網と似ていることからこの名前がついた。神経細胞が互いに信号をやりとりするように信号をやりとりしながら同時にデータを処理する。何より最近AI学習に多く使われるグラフィック処理装置(GPU)より電力消費が少なく効率的なためスマートフォンとPCに搭載され機器でAIを動かすのに使われる。

◇NPUが浮上する

オープンエッジはサムスン電子システムLSI事業部で半導体設計研究開発をしていたイ代表と同僚が独立して2017年に創業した。サーバーを経ず機器自体で駆動するエッジ用半導体設計の中心となるという抱負を持って会社名を「オープンエッジ」に決めた。

予想は的中した。チャットGPTの登場でAI革命が始まり、インターネットにつなげなくても個別の機器でAIを駆動できるオンデバイスAIが脚光を浴び始めたのだ。1月にサムスン電子が発売した「ギャラクシーS24」シリーズが代表的なオンデバイスAIスマホだ。今年サムスンだけでなく、アップル、クアルコム、インテルなどがいずれもNPUを搭載した製品を出す。イ代表は「生成AIは革新的な技術だが消費電力と費用の問題が大きい。個人が所有するコンピューティングパワーを分けて使ってきたデバイスAI技術が本格的な代案として注目された結果」と分析した。

ここにAI半導体市場が開かれNPUのようなシステム半導体とメモリーの間のボトルベック現象が問題に浮上した。どれかで「頭脳」が速くてもメモリーが適時にデータを供給できなければ性能が上がらないためだ。両者をつなぐIPブロック作りの専門であるオープンエッジに巨大市場が開かれたのだ。

次世代収益源に挙げられる車両用自動運転半導体市場も狙っている。NPUは性能と速度が同時に要求される完全自動運転の実現に向け理想的なチップに選ばれる。関連IPを応用する可能性もまた無尽蔵だ。これと関連してオープンエッジは4月に新しいNPU向けIPである「インライトプロ」を出した。既存製品よりチップ性能が4倍以上改善された。車両用自動運転だけでなく、カメラやモバイルチップに適用できるIPだ。イ代表は「すでに顧客にIPが伝えられた。今年末にテープアウト(チップ設計を終え生産工程に移る段階)する予定」と話した。

イ代表は「最近容量と帯域幅を顧客の用途に合わせるオーダーメード型メモリー時代が始まり関連IP需要も急増する傾向だ。まだ韓国の半導体産業はほとんどが製造工程に集中しているが、IP開発が全生態系の出発点に当たるだけに世界的なIP企業であるアーム、シノプシス、ケイデンスと肩を並べるだろう」と話した。